
流産してしまい、立ち直れない…
田村秀子婦人科医院院長の田村秀子先生に、アドバイスをいただきました。
田村秀子婦人科医院院長の田村秀子先生に、アドバイスをいただきました。
流産で気持ちを引きずってしまいます…
不妊治療の末に、やっと授かった子どもを流産しました。その後、義母から旦那に電話があり、電話中に旦那が怒りだしたので、何があったのか聞くと、義母が電話やメールで「いつまで病気でいるつもりなの?」「まだ生まれてきてもいないのに、いつまでも引きこもっているのはおかしい」と言っていると、渋々教えてくれました。とても悲しくなりました。もうすぐ1か月が経ちますが、今は何もしたくないし、誰とも話したくない気持ちです。義母が言うように、やはり私は気持ちを引きずりすぎなのでしょうか。(しなもんさん・主婦・37歳)
考え方を変えるだけで、元気が生まれるはず。 人間は大変なことを たくさん乗り越えているから
流産は〝母予約切符〞を手に入れたようなもの
まず、流産というものについてお話ししておきましょうね。流産は、化学流産も含めて、妊娠の3割は流産するという統計があるくらいですから、医学的な観点から見るとそれほど珍しいことではありません。それと、赤ちゃんは生まれてこなかったわけですから、喪失したわけではないんです。あくまでもゼロはゼロの領域で、決してマイナスではないということです。
とはいえ、流産は女性にとって、本当につらい経験です。では、このつらい経験をトラウマにしてしまわないためにはどうすればいいのでしょうか。
しんどいことだとは思うけれど、とにかくプラスの方向へ変わらなきゃいけないと思うのです。「なんて悲しい経験をしてしまったんだろう」という悲観的な捉え方ばかりではなく、「私は、妊娠できることの証明をもらえたんだ」と、プラスの捉え方もしてほしい。
これは、いつも私が言っていることなのですが、〝母になる予約切符を手に入れたようなもの〞と思ってはいかがでしょう。今回はこういう形になってしまったけれど、
2か月先、3か月先、半年先か1年先かはわからないけれど、いつか「神さまは赤ちゃんをもう一度連れてきてくれる」という、希望に変えてほしいと思います。
不妊症の患者さんには、いい卵子ができても、卵管が通っていても、原因不明の不妊で妊娠できないという方も多いです。そんななか、自分が妊娠できたということは、それだけでプラスの要因になります。ですから、前へ進むためにも、気持ちを切り替えていきましょう。
悲しみを重く引きずったまま不妊治療を続けると、これからも排卵日にセックスするたびに、「ああ、またあんなにつらいことが起こったらどうしよう」と思ってしまうのではないでしょうか。心にそんな不安を抱えたままだと、体や卵管が緊張したり、ご主人にもそれが伝わったりして、ますます妊娠が遠のいてしまうかもしれません。
気持ちを整理できればチャンスはやって来る
たとえば、難病の子どもを抱えているとか、子どもを不慮の事故で亡くしたとか、がんで子宮を取らないといけないとか、女性にとって苛酷な環境はたくさんあります。流産直後は、あまりのつらさに押しつぶされて、悲劇のヒロインのような気持ちになってしまい、冷静に考える余裕がなくなってしまっているかもしれません。でも、流産はリセットできること。もう一度トライすることが可能なことなのです。
当院にも、子どもを亡くされて、もう一度と不妊治療の相談に来られる方が時々いらっしゃいますが、悲しみをいつまでも引きずっている方はなかなか妊娠できないようです。一方、子どもが亡くなられた時の状況を、涙を見せながらも、冷静にきちんと話せる人は、妊娠されるのも早いです。そういう方は、きっと自分のなかで気持ちの整理ができているのでしょうね。
体外受精でやっと授かった2歳の子どもを亡くしたある母親は、「泣いていたらあの子に申し訳ない」とおっしゃって、44歳で再び体外受精で妊娠し、無事に出産されました。私はそういう母の強さ、前へ進む、自らをプッシュする力を見習いたいと思います。どんなにつらいことがあっても、気持ちに「けりをつける」ということが人間にはできると思うんです。
しなもんさんも、考え方を変えてみたら、きっと元気になれると思います。それはきっと難しいことではないと思いますよ。なぜなら、もっと難しい、大変なことも、人間はいっぱい乗り越えてきていますからね。
今は「私って妊娠できるんだ!」という強い思いで乗り越えていく時です。そうすれば、きっと次のチャンスが早く訪れると思います。
写真提供:ゲッティイメージズ
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