小児科医・高橋孝雄先生が伝える「最高の子育て」③ | MAMADAYS(ママデイズ)
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小児科医・高橋孝雄先生が伝える「最高の子育て」③

小児科医として、また父親として多くの子どもと向き合う高橋孝雄先生。悩みの尽きない子育てにおいて「子どもの力を信じる」ことの大切さを考え続けてきました。著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』から、すべてのママ・パパに伝えたい子育て論をご紹介します。
小児科医として、また父親として多くの子どもと向き合う高橋孝雄先生。悩みの尽きない子育てにおいて「子どもの力を信じる」ことの大切さを考え続けてきました。著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』から、すべてのママ・パパに伝えたい子育て論をご紹介します。

トップアスリートであっても、極上の遺伝子の持ち主とは限りません。

遺伝子の話題はなぜ盛りあがるのでしょう。タレント、歌舞伎役者、政治家一族、スポーツ選手、ノーベル賞受賞者など、メディアで見かける著名人のエピソードもあれば、元同級生の秀才君や親戚・家族のことなど、話が尽きることはないからです。

そもそも遺伝子ってなんでしょう? 中学か高校の生物で習ったような、習っていないような。曖昧な記憶はさておいて、ちょっとだけ小難しい話になりますが、どうか読みとばさずにおつきあいくださいね。

さて、最初に遺伝子の数の話。ヒトには2万数千個の遺伝子があります。すべての遺伝子は、決まった順番でアミノ酸を作る設計図のようなものです。ひとつの遺伝子から多くのアミノ酸が秩序正しく作られます。

レゴブロックを使ってなにか形あるものを作る過程を想像してみてください。アミノ酸は少しずつ色や形が異なるレゴブロックのようなものです。アミノ酸を組み合わせることでタンパクが作られます。タンパクの最大の特徴は〝正しい形〞を持っていることです。ひとつひとつの遺伝子の役割は、決まった種類のアミノ酸を決まった数、決まった順番で作って、ある形を持ったタンパクを作ることです。例えば赤や緑や茶色のレゴブロック(アミノ酸)を作って、リンゴの木(タンパク)を作るようなものです。その遺伝子はリンゴの木を作るための設計図ということになりますね。

正しくタンパクを作れば、そこに機能が宿ります。次に、無数のタンパクが集まって、細胞ができあがります。それぞれの細胞は、これから作る臓器の働きに合わせて個性を持つようになります。心臓を作るとしたらドキドキと動きだしたり、脳だったら電気をおこしたりと。さまざまなリンゴの木を作る遺伝子が協力してリンゴ畑(細胞)を作るようなイメージです。りんご畑の遺伝子が他の遺伝子とも力を合わせて広大な果樹園(臓器)を作ります。

遺伝子に組み込まれた情報を読み解くことは、生命が形作られる過程を知るはじまりです。その後におこるさまざまな人生ドラマのシナリオも、遺伝子が最初に決めているといっても過言ではありません。

子どもをスーパーエリートにしたい、ヨーロッパのクラブチームで活躍するプロサッカー選手にしたい、ノーベル賞をとってほしい、世界的なピアニストにしたい……。大きな希望を抱くことは胸躍りますが、そのような夢がかなう確率は、みなさんご存じのとおり、不可能ではないでしょうが、極めて低いのです。

ノーベル化学賞を受賞するような優秀な科学者、トップランクの大学を首席で卒業するような秀才、世界で活躍するプロの運動選手、オリンピックで連続金メダルを獲得するアスリート。彼らの遺伝子は、一般のひとたちと比べてとびきり優秀なのでしょうか。脳や筋肉のタンパクの〝作り〞が根本的にわれわれとは違っているのでしょうか。これらのエリートたちは極上の遺伝子を持っていたのでしょうか。答えはすべてNOです。エリートとは言え、ひとはひと。遺伝子が決めたシナリオの余白、振れ幅の範囲に収まっているものです。

たとえばオリンピックで活躍したフィギュアスケートの羽生結弦選手はどうでしょう。たぐい稀な運動神経とリズム感やセンス、手足の長さなどは、遺伝子の恩恵とも言えますが、特別な遺伝子が組み込まれているわけではないのです。正常の範囲に収まるけれど少しだけ個性のある遺伝子の〝素敵な振れ幅〞に、シナリオの余白に、たまたま5歳でスケートを習い始め、たまたまコーチにも恵まれ、たまたまスケートを続けられる経済力のある家庭に育ち……というさまざまな環境の力が重なっての結果だと思うのです。

いっぽうで、不利な方向に正常の分布からはみ出す人たちもいます。遺伝的な力によって大きく振れている場合、「ふつう」や「そこそこ」になるように無理やり矯正しようとしても、逆効果になるかもしれません。むしろ大事なことは、得意なことを一緒に見つけること、見つけようとする姿勢で子育てすることだと思います。極上の遺伝子がないように、劣悪な遺伝子もない。通常の振れ幅におさまっていないからこそ、そこに天才的な才能が眠っているのかもしれません。

写真提供:ゲッティイメージズ

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