小児科医・高橋孝雄先生が伝える「最高の子育て」⑧ | MAMADAYS(ママデイズ)
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子育てのエッセイ・体験談

小児科医・高橋孝雄先生が伝える「最高の子育て」⑧

小児科医として、また父親として多くの子どもと向き合う高橋孝雄先生。悩みの尽きない子育てにおいて「子どもの力を信じる」ことの大切さを考え続けてきました。著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』から、すべてのママ・パパに伝えたい子育て論をご紹介します。
小児科医として、また父親として多くの子どもと向き合う高橋孝雄先生。悩みの尽きない子育てにおいて「子どもの力を信じる」ことの大切さを考え続けてきました。著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』から、すべてのママ・パパに伝えたい子育て論をご紹介します。

他人と比べない、こまめにほめる。 それが、自己肯定感を伸ばす基本です。#

そもそも自己肯定感(セルフエスティーム)ってなんでしょうか。ぼくなりに翻訳すると子ども自身が「生まれてきてよかった」と感じることだと思います。それさえ達成されれば、子育ては成功したと思ってもいいくらいです。

さて、ちいさな子どもは、決して自分のことを不幸とは思わないものです。どんな貧困家庭に生まれても、親から酷い虐待をうけていたとしても、自分のおうちはこんなものだと思っています。よその家庭と比べることもできないし、世間一般の基準といった概念もない。だから、たとえ手を上げられても、ひどい言葉でなじられても、お風呂に入れてもらえなくても、そして無視されても、おとうさんやおかあさんのことを恨んだりしないのです。

むしろ虐待をうけている子ほど、親の近くからはなれようとしません。「ぼくが悪い子だから、こんなことをされる。どうしたら、もっと好きになってもらえるのかな」と。また、自分のまわりで起こる悪いことは、すべて自分のせいだと感じます。他人と比べない、こまめにほめる。それが、自己肯定感を伸ばす基本です。「おとうさんがおかあさんを殴るのは、あたしがおかあさんを大事にしてないからだ。おかあさんが泣いているのは、あたしのせいだ」と思うのです。

子どもというものは無垢なものです。貧困にも虐待にも、それだと気づかないのです。自分の家がよそと比べてどうか、自分は幸せなのか不幸なのかを実感できるようになるのは、自分を客観視する能力(メタ認知)が育つ小学校高学年以降のことです。自己肯定感を失うとすれば、それは大人のせいです。

では、どうすれば子どもが本来持っている自己肯定感を、そのまま維持できるのでしょうか。それはちいさいうちから「やればできるようになる」という経験をたくさん積ませてあげること、それに尽きます。スポーツだって勉強だって、ピアノやお習字や絵画だって、とことん追い詰めたり、強要したりしないこと。子どものうちにわざわざ挫折感を味わわせる必要はありません。

ささやかな成功体験をたくさん積ませて「すごいね」「よくできたね」とほめる。ほめるときは思いっきりね。子どものころに成功体験を積んだ人間は強いですよ。「やればできる」「自分のことが大好き」ということは、子どもにとって大きなチカラになります。

たとえば子どもが料理を手伝おうとしたとします。失敗するかもしれない。ちいさなけがをするかもしれない。食材がダメになるかもしれない。それでも、手伝ってもらう。そして上手にできたら「すごい、すごい」と手をたたいてほめてあげましょう。失敗しても「トライしたことがえらい」とほめればいいのです。「いつもほめてばかりじゃ、つけあがりませんか?」と心配されそうですが、だいじょうぶ。出し惜しみしないで、思いっきりほめてあげましょう。

ぼくが診察室で会う、日常生活でのさまざまな困難を抱えた子どもたちの話をさせてください。発達障害の診断名はついていなくても、デリケートな子ども、個性的な子どもたちは、いつもさまざまな誤解と隣り合わせです。先生やおかあさん、おとうさん、見知らぬおとなにまで叱られてばかりいる子どもたちも多いのです。「友だちと比べてできないことばかりだ」「どうやら自分はみんなとは違うようだ」そんなふうに感じているのです。

そんな子どもたちを育てているおかあさんには、「叱らずに、ほめることでなにかを伝えてください」とお願いしています。そのような時に役立つのは、ネガティブな言葉をポジティブな言葉に置き換えることです。〝ポジティブワード〞は、発達に問題のないお子さんにも効果があり、学校でも少しずつとり入れられています。

たとえば、こんなふうに。「廊下は走らないで。危ない、走っちゃダメ」→「廊下はゆっくり歩こうね」

「もう、うるさいな。黙りなさい」→「元気な声だね。今は静かにできるかな」

「字が汚い、こんなの読めないよ」→「ゆっくり書いてみようか」

「忘れ物しちゃダメでしょう」→「いっしょに持ち物リストをチェックしてみよう」

否定形を肯定形に置き換えると、気持ちよく耳に入ってくるものですね。とっさに出てこないときは、よく使う言葉をリストにしておくといいかもしれませんね。

連載の目次

  • 出典

    小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て
    高橋孝雄著、マガジンハウス ※情報は掲載時のものです
    https://magazineworld.jp

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