トモニテ
子どもを叱る母親

【児童精神科医ママに聞く】Q. 効果的な子どもの叱り方を教えてください

A. 十分に待ってから具体的に指示を! それでもダメなら警告のうえ責任を取らせて

 ランドセルを投げっぱなし、脱いだ服を散らかしっぱなし、宿題をせずにゲームしてばかり......。子どもを毎日同じことで叱るとなると、親のほうも腹が立つのは当然です。でも「何度言ったらわかるの?」などと声を荒げて叱っても、子どもはできるようになりません。 こうした言葉は親の怒りをあらわすことにしかならず、 子どもの能力を伸ばす『ほめること』につながらないし、 具体的な指示も与えていないからです。ましてや「○○してはダメ」などと行動を否定するのではなく、「なんて悪い子なの!」「だからダメなんだよ!」などのように人格を全否定する言葉をかけると、子どもの自己肯定感を下げてしまいかねません。

 では、何度注意しても忘れてしまう子どもを目の前にして、一体どこをほめるのかという話ですよね。そのままではほめるのが難しいので、効果的な叱り方をご紹介します。叱るというと厳しい言葉をかける、怒鳴る・叩くなどのイメージが強いかもしれませんが、本来の意味である『子どもが取ったよくない行動に対し、子どもにとってうれしくない結果を返すこと』を考えると、もっと効果的な方法が見えてきます。

ステップ1『してほしくない行動』を無視する

『してほしくない行動』をしているときは指摘せず、無視しておきます。子どもの存在を無視するのではなく、行動だけを無視します。たとえば脱いだ服を散らかしたままの子どもに「明日の書道で墨汁が必要なんだ」などと話しかけられたら、「そうなの? 準備しなくちゃね」 と応じてあげてください。『してほしくない行動』を無視するのは、『してほしい行動』に切り替わったときに、すかさず子どもに注目してほめるため。親に注目されるのは子どもにとってうれしいことで、社会的強化子になります。『してほしくない行動』について直接ガミガミ言うのではなく、注目しないというやり方で静かに間接的に叱るのが効果的です。また声を荒げて叱らないのは、いざというときのために、その効果を高く保っておくためにも重要なのです。

許しがたい行動の場合

 たとえば、子どもが兄弟姉妹や友だちと遊んでいるとき、お互いに暴力をふるうことは、 緊急性がない程度であっても『許しがたい行動』に入りそうです。その場合は、すぐに介入しましょう。子どもが選びたくなるような提案や選択肢を与えることで、『許しがたい行動』 をやめさせ、『してほしい行動 (けんかをせずに遊ぶこと)』を選択させることができます。

(a)取り引きをする:「これからふたりともが、お互いに怒鳴ったり叩いたりとかしないでおだやかに遊べたら、おやつにしようね」

(b) 選択肢を与える:「怒鳴ったり叩いたりせずにふたりで遊ぶのと、ひとりずつ別々の場所で遊ぶのと、どっちがいいか決めてね」

(a) ではふたりで一緒におやつを食べること、(b) ではふたりで遊ぶことが子どもたちにとってうれしいことであるなら、『してほしい行動』を取ろうとするはずです。 公共の場所で大騒ぎするなど、そのほかの『許しがたい行動』にも同様に対処しましょう。

ステップ2 してほしい行動を指示する

 しばらく待ってみても動かなければ、子どもにどんな行動をしてほしいかを指示します。子どもの近くで、きちんと目を合わせて、おだやかだけどはっきりした口調で、具体的な内容を伝えるのがポイントです。「脚立からすぐに降りてね」「脱いだ靴下を洗濯かごに入れてね」など、何をすればよいかが正確にわかるような言い方をします。もちろん、指示に従うことができたら、「えらかったね」「ありがとう」などとほめ言葉をかけます。たとえ「えー、イヤだぁ」「なんで?面倒くさいんだけど」などとブツブツ言いながらでも、きちんとアクションを起こせたらOK。反抗的な言葉は聞き流しましょう。

 親が『許しがたい行動』や『してほしくない行動』を責めず、冷静かつ具体的に『してほしい行動』を指示することで、子どもには行動をやり直して指示に従うチャンスが訪れます。

なるべく小分けにして指示を出そう

「まだうちの子には難しそう」と思える行動もあるかもしれません。親がそう思っているのにやらせて、失敗したら叱るのでは、子どもを叱るために行動させているようなものです。

 そこで役立つのが、ひとつの課題を小さなステップに分解して、少しずつクリアできるように指示を出すという方法です。「明日の登校準備をする」という課題は難しくても、「連絡帳を見て、宿題をする」「教科書やノートをそろえる」「教科書以外に持っていくもの(リコーダー、体操服など)を準備して、ランドセルの横に置く」「担任〜保護者間のプリントがないか確認して、連絡袋の中身を入れ替える」などと細かく分ければ、一つひとつが達成しやすくなりますね。そして、ほめる機会が増えるというメリットもあります。

ステップ3  予告する、警告する、責任を取らせる

 具体的に指示をしてもダメだったとき、明らかに失敗しそうなときは事前に予告し、もう一度警告して思い出させ、責任を取ることを覚えさせるようにしましょう。
 指示に従わないときは、たとえば「服を洗濯かごに入れないと、お母さん洗い忘れるからね」「本読みをやろう。お父さんは早く寝るから、付き合えなくなるよ」など、予告や警告をしながら再度おだやかに指示します。それでも行動を起こさないときは、服を代わりに洗濯機に入れたり、夜遅くまで宿題の本読みに付き合ったりはせず、子どもに責任を取らせます。

 また明らかに失敗しそうなとき――たとえばジュースを入れたコップを一度に3つ運ぼう としていたら、「ひとつずつ持っていきなさいね。コップを運ぶのは難しいから」と予告します。 それでも一度に3つ持とうとしていたら、もう一度「ひとつずつだよ。ジュースがこぼれたら飲めなくなるし、片づけも大変だから」と警告します。それなのに3ついっぺんに運ぼうとして、途中でコップを落としたり、コップが傾いてジュースがこぼれたりしたら、子どもに責任を取らせます。ここでは「雑巾を持ってきて拭きなさいね」と床をきれいにさせることやジュ ースを飲めなくなることが、子どもにとっては好ましくない結果になるでしょう(コップが割 れて破片が飛び散った場合は、けがをしないよう片付けを手伝ってあげてくださいね)。子どもに責任を取らせるときは怒りや非難を込めず、くどくど説教したりもせず、終わったら「ちゃんと片付けてくれてありがとう」とほめて締めくくってください。

 ちなみに、しつけのスタイルはさまざまですが、指示や警告をするときはご両親の片方だけで行うのがいいと思います。特に核家族の場合、大人全員(ご両親)から叱責されると、子どもが追い詰められてしまうからです。たとえばお母さんが子どもに指示や警告をしたとき、お父さんは「あれ?お母さんは、なんて言ってたっけ?」とお母さん側をフォローしたり、「お母さんは厳しいなぁ。でもお前も気をつけろよ」と子ども側をフォローしたり、あるいは両者のやりとりには加わらずに見守ったりするのがいいのではないでしょうか。

 考えてみれば、大人だってすべきことを必ずしも完璧にできているわけではありません。それなのに、まだ自分の行動をコントロールする力が不十分な子どもたちに完璧であることを期待するのは無茶というもの。子どもによい習慣を定着させることを目標に、「おだやかな声かけで思い出させ、実行させてほめる」という形をできるだけ多くつくることができたらいいと思います。もちろん、大人が社会や家族のルールを守っている姿を示すことも大切ですね。

 ここにあげた方法を使えば、子どもの人格を否定するような激しい言葉をぶつけたり、体罰を使ったりすることなく『してほしい行動』を引き出しやすくなるはずです。一度にマスターするのは難しいし、慣れるまでは大変だと思いますが、ぜひ少しずつ挑戦してみてくださいね。

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