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【専門家監修】育休を延長したい!条件や手続きの方法は?

【専門家監修】育休を延長したい!条件や手続きの方法は?手当はどうなる?

育児休業(育休)について、延長できる条件やその手続き、方法、そして育児休業給付金の額などを解説します。子育ては何が起きるかわからないので、当初予定していた育休の期間では足りないことがあります。育休をどのようにして延長するのか、またその資格や条件など紹介します。
育児休業(育休)について、延長できる条件やその手続き、方法、そして育児休業給付金の額などを解説します。子育ては何が起きるかわからないので、当初予定していた育休の期間では足りないことがあります。育休をどのようにして延長するのか、またその資格や条件など紹介します。

通常の育休について(延長前のルール)

延長のルールを解説する前に、通常の育休について解説します。

延長は通常の育休の例外規定なので、通常の育休のルールを押さえておきましょう。

育休は、産まれてきた子どもの育児のために休業することを希望する労働者に、事業主が休みを与える仕組みです。

育休制度の根拠法は育児・介護休業法です。

育休中は無給だが育児休業給付金が支給される

育休制度の重要な要素は2つあり、1つ目は、原則子どもが1歳になるまで休業が取れること。2つ目は育休期間中、無給になる可能性があることです。

法律は、事業主(企業など)に対し労働者に育休を与えるよう義務化しています。ですが事業主には、育休中の労働者に給与を支払う義務はありません。

その状態では育休を取った労働者の生活が困窮してしまうかもしれないので、雇用保険から、労働者に、育児休業給付金というお金を支給しています。

育休を取得するための条件

育休を取得するための条件は以下の二つです。

  • 1歳未満の子どもを養育する労働者である
  • 同一の事業主に引き続き1年以上継続して雇用されている

育休の期間は原則、子どもが1歳になるまでの希望する期間です。したがって最長約1年間休むことができます。

育休を取得する条件については、以下の記事でも詳しく解説しています。

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この記事では、育休を利用する条件と、育児休業給付金の概要について解説します。

育児休業給付金を受給するための条件

法律には、会社の了承が必要になるとは書かれていませんが、実際は会社の了承を得て育休を取ることになるでしょう。

したがって、会社が了承すれば育休は取れるわけですが、問題は育児休業給付金です。

育休を取得したからといって、自動的に育児休業給付金が支払われるわけではないので注意しましょう。

育児休業給付金が支払われる受給要件は次のとおりです。

〈育児休業給付金の条件と資格〉

●条件

育休終了後に職場復帰する(退職を予定している人は対象外)

●受給要件

下記、厚生労働省より引用しています

育児休業給付の受給資格は、育児休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月(※)以上必要となります。

なお、育児休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月(※)ない場合であっても、当該期間中に第1子の育児休業や本人の疾病等がある場合は、受給要件が緩和され、受給要件を満たす場合があります。

(※)育児休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1か月とする。

有期雇用労働者は、上記問2の要件に加え、育児休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続しており、かつ、子が1歳6か月までの間に労働契約が更新されないことが明らかでないことが必要です。

育児休業給付金の額

育休中の人に支給される育児休業給付金の額は、以下の方法で算出します。

●給付額の計算方法

  • 給付額=休業開始時の賃金の日額×支給日数×67%

※支給単位期間の支給日数は、原則として、30日(ただし、育児休業終了日を含む支給単位期間については、その育児休業終了日までの期間)となります

※育休開始から6ヶ月経過後は「67%」が「50%」になる

●給付額の目安は次のとおり

  • 給与が平均して月額15万円の人

→育休開始から6ヶ月間は月約10万円、それ以降は月約75,000円

  • 給与が平均して月額20万円の人

→育休開始から6ヶ月間は月約134,000円、それ以降は月約10万円

  • 給与が平均して月額30万円の人

→育休開始から6ヶ月間は月約201,000円、それ以降は月約15万円

※育休開始から6ヶ月が経過すると減額されることに注意してください。

育休を取得できる期間

育休を取得できる期間は、原則子どもが1歳になるまでです。

スタート地点は女性(ママ)と男性(パパ)で異なります。

女性は、出産の翌日から8週間は、就業することがでず産休(産後休暇)になり、それ以降、1歳までが育休になります。

男性は、もちろん出産がないので、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得可能になります。

したがって、実際の出産日が出産予定日より遅れると、男性の育休期間は1年間より少し長くなります。

育休期間については、以下の記事でも解説しています。

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パパ・ママ育休プラス制度

パパ・ママ育休プラス制度は、ママとパパともに育休を取った場合、子どもが1歳2ヶ月になるまで育休を取得できる仕組みです。

通常は1歳までなので、2ヶ月延長されるわけです。

しかし、夫婦それぞれが取得できる休業期間の上限は、原則1年です。女性の場合は、産休の8週間を含めて1年間です。

したがって、夫婦が同時に出産直後に育休を取り、そのまま休み続けると、育休は1歳で満了してしまいます。子どもが1歳2ヶ月になるまでどちらかが育休を取得するには、夫婦で休業期間を調整しなければなりません。

パパ・ママ育休プラスについては、以下の記事でも解説しています。

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育児休業を最大1歳2ヶ月まで延長できる「パパ・ママ育休プラス」。一体どんな制度なのか、取得のパターンなどを詳しく解説します。

育休が延長できる条件

それではこの記事のメーンテーマである、育休の延長について解説します。

先ほど紹介したパパ・ママ育休プラスも、原則1歳までを1歳2ヶ月までに延長していますが、この章で紹介するのはまた別のルールです。

育休は、条件をクリアすれば、最長で子どもが2歳になるまで延長できます(*)。

育休の延長にともなって、育児休業給付金も2歳まで延長できます。

*:「Q&A~育児休業給付~」厚生労働省

延長の条件

育休は、まずは1歳6ヶ月まで延長し、それでも足りない場合2歳まで延長する、という2段階構えになっています。

育休を1歳6ヶ月まで延長できるのは、子どもが1歳のときに、次のいずれかの条件にあてはまったときです。

●条件1:保育所などへの入園を希望し、申込みを行っているが、子どもが1歳に達しても入園できない場合

●条件2:常に子どもの養育をしている配偶者が、子どもが1歳に達する日後の期間に以下のいずれかに該当したとき

  • 死亡
  • 負傷や病気、身体上の障害、精神上の障害で子どもの養育が困難になったとき
  • 離婚などの事情により配偶者が子どもと同居しなくなったとき
  • 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定である、または、産後8週間を経過しないとき

この状態が、子どもが1歳6ヶ月になっても解消されない場合は、2歳まで延長できます。

ただ延長するには申請が必要です。上記の事情があっても自動延長になるわけではありません。

育休が延長できないケース

保育所に入園できなくても、次のケースは育休を延長できないので注意してください(*)。

〈育休を延長できないケース〉

①市区町村に問い合わせたところ、年度途中での保育所への入園が難しい状況、または定員超過のため次回の入園が困難であるとの説明を受け、入園申込みを行わなかった場合

②無認可保育所などへの入所申込みの場合

③保育所の入園申込日が1歳の誕生日以降となっている場合

④保育所の入園希望日(利用開始日)が、1歳の誕生日の翌日以降となっている場合

*:「保育所に入所できない場合の育児休業給付金の延長について」厚生労働省

育休の延長を申請する方法

育休の延長の申請は、子どもが1歳の誕生日を迎える2週間前までに行います。

育休延長の実際の手続きは通常、事業主(会社)が行います。

そのため育休の延長を希望する人は、会社の総務部の担当者などに依頼する必要があります。2歳まで延長するには、1歳6ヶ月になる頃に再度同じ申請手続きをする必要があります。

必要書類

育休延長を希望する人が、その申請をするときに必要になる書類は以下のとおりです。

育休延長が必要な理由ごとに書類は変わってきます。

※申請書などは会社の総務部などで用意するので、ここでは省略しています。

■保育所に入園できないことが理由の場合

  • 市区町村が発行した「保育所入所不承諾通知書」や「利用調整結果通知書(保留)」の写し

※市区町村により名称は異なります。

以下、管轄の労働局ごとに、必要書類が異なりますが、例を紹介します。

■養育を予定していた配偶者の死亡が理由の場合

  • 世帯全員について記載された住民票の写し
  • 母子健康手帳

など

■養育を予定していた配偶者の健康問題が理由の場合

  • 医師の診断書
  • 母子健康手帳

など

■離婚などにより配偶者が子どもと同居しないことになったことが理由の場合

  • 住民票
  • 母子健康手帳

など

■出産する予定である、もしくは出産したことが理由の場合

  • 母子健康手帳

など

これらの書類を会社の総務部の担当者に提出することになります。

育休の延長希望を会社にどう連絡するか

育休の延長が必要になったら、すぐに会社に連絡または相談をしましょう。

従業員の育休が延長になると、会社は、育休延長の申請が必要になるだけでなく、仕事の予定を変更したり人材を確保したりしなければならないからです。

会社への連絡方法

会社への連絡・相談は、できれば出社して直接会って話したほうがよいのですが、コロナ禍を考慮すると電話でもよいでしょう。

ネット会議システムを使えば顔を合わせることができるので、電話よりよいかもしれません。連絡するのは、直属の上司と総務部の担当者は必須で、必要に応じてそのほかの関係者にも知らせてください。

メールやLINEは、第1報(一番最初の連絡)で使わないほうが無難です。

メールの文面

上司や総務部の担当者に対し、育休延長の連絡・相談を、いきなりメールで行うのは失礼にあたる可能性があるので避けたほうがよいのですが、電話で連絡・相談したあとに説明を補足する目的でメールを送るのは問題ありません。

そのときの文面例を紹介します。電話で第1報を入れていることを前提にしています。

これをベースにアレンジして使ってみてください。

件名:育児休業の延長のお願いについて

〇〇様(上司または総務部担当者の名前)

先ほどは電話で失礼いたしました。あらためて文章で、育児休業の延長を希望したい事情をお伝えいたします。

育休あけとなる○月○日に職場復帰する予定でしたが、保育所に入園できないことが確実になってしまいました。

そのほかの預け先も探したのですが、私の父母も、夫の(または妻の)父母も都合がつかず、期日までに預け先を確保することができませんでした。

そのため、○月○日まで、育休を延長させていただきたく存じます。

ご相談の場を一度いただけますと幸いです。

○○(自分の名前)

育休を延長したときの育児休業給付金は50%のまま

育休を延長しても、育児休業給付金の額は変わりありません。

育児休業給付金の額は、以下のように算出します。

  • 給付額=休業開始時の賃金の日額×支給日数×67%
  • 育休開始から6ヶ月経過後は「67%」が「50%」になる

育休延長の申請は、育休開始から約1年後または約1年6ヶ月後に実施されるので、すでに「50%」になっています。

育休が延長されても「50%」のままで、これより減額されることはありません。

育休延長に際して会社への連絡を忘れずに

連絡・相談は、育休延長が必要になる事情が発生したらすぐに行ったほうがよいでしょう。早ければ早いほど、上司や総務部担当者はしっかり準備できます。

育休延長では、子どものこと、自分のこと、配偶者のこと、会社のこと、仕事のことも考えなければならないので大変だと思いますが、課題を1つひとつ解決していけば、無事乗り切れるはずです。

  • 育休を延長するには条件を満たしている必要がある
  • 育休延長の申請は子どもが1歳の誕生日を迎える2週間前までに行う
  • 育休を延長できないケースもあるので注意
  • 育休延長の場合は早めに会社へ連絡する

写真提供:ゲッティイメージズ

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