母乳を飲む赤ちゃん

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子育ての悩み・トラブル

【小児科医ママに聞く】Q. 母乳育児がつらすぎてやめたいです

A. つらいなら、混合や完ミにしても大丈夫。でも、その前にラクになる方法を試してみて 

「もう母乳をやめたい」、じつは私もそう思ったことがあります。子どもが母乳をうまく飲めずに、でもお腹がすいているから大泣きしたときは粉ミルクでもいいなと思ったし、子どもがのけぞって吸い付かないときは自分を拒否されたような気がして心が折れました。

 まずは、あなたがどうしてやめたいのか、その理由を考えてみましょう。『母乳育児スタンダード』という本では、直接授乳を困難にする要素を以下の①〜⑥のように分類しています (産科退院後にかかわるもの)(※1)。それぞれについて詳しく解説していきます。

①母乳育児を阻害するような慣習 

 「1回の授乳は左右5〜10分ずつ」「次の授乳まで3時間あける」などといった窮屈なルールがあると、母乳育児がつらくなることがあります。そういう指導をする医療機関もあるようで すが、あくまでも目安です。大人が時計を見て決めるよりも、赤ちゃんをよく見ましょう。ほしがったときに、満足するまであげてください。そうすると、ペースがつかめてラクになるかもしれません。また、乳房が特別に汚れたり、乳頭が傷ついたりしていなければ、拭いたり軟膏を塗ったりする必要はありません。

 そして、授乳中の服の制限がつらい場合もあるようです。特に授乳用の服を着なくても、乳房をきつく圧迫しなければ、好きな服を着てかまいません。そのほかの制限(食事、嗜好品、 服薬)がつらい場合は、ダメなものばかりではありませんから、身近な医師に相談してみてくださいね。

②不適切なポジショニングとラッチ・オン

 ポジショニング(姿勢)やラッチ・オン(吸い付かせ方)がうまくいかないと、スムーズに授乳できなかったり、体勢がきつかったりしてつらくなりがちです。また、「ずっと縦抱きでないと、赤ちゃんの背骨が曲がって免疫力が落ちる」などと授乳姿勢を制限する言説を耳にすることがありますが、根拠のないウワサです。母子ともにリラックスできる姿勢で授乳しましょう。

 夜中の授乳がつらい場合は、添え乳をしてみるのもいいでしょう。いわゆる添え乳、同じ布団やベッドで赤ちゃんと一緒に横になり授乳をする方法は危険だと言われてきました。しかし、ソファーでの添え乳、飲酒、薬の内服、喫煙した上での添え乳、お子さんが早産だった場合の 添え乳でなければ、乳児突然死症候群のリスクにはならないという研究結果があります。(※2)

③乳頭・乳輪の形態および伸展性

 授乳を始めてすぐの頃は、乳頭の伸びが悪くて、赤ちゃんがうまくくわえられないために、 泣かれてつらい思いをすることがあります。授乳を繰り返すうちに、乳頭が扁平または陥没している場合でも徐々に伸びてきますし、赤ちゃんのほうも口が大きくなったり、飲むのが上手になったりすることもあって、自然と問題が解決するケースが多いものです。前述の本には、 繰り返し授乳することで、1〜2週間で乳頭が柔軟に伸びるようになるとあります。ですから、 授乳を始めたばかりであれば、慣れるまで続けてみてはどうでしょうか。また、乳房が張りすぎていると赤ちゃんが吸いづらいので、少し搾乳してから授乳するという方法もあります。

④哺乳できない、または哺乳を嫌がる児

 赤ちゃんがうまく哺乳できなかったり、嫌がったりするのも、母乳育児がつらくなる原因のひとつでしょう。この場合は、下の記事を参考にしてみてください。

⑤母親のネガティブな感情(緊張・悲嘆・自信喪失など)

  なんらかの原因で、お母さんが緊張していたり不安が強かったりすると、本来はできることもできなくなってしまうことがあります。もしも寝不足や身体的な疲れがあったら、まずは休みましょう。搾乳しておいた母乳、もしくは粉ミルクを父親や祖父母に与えてもらうのもおすすめです。また、不安なことがあれば身近な人や保健師などに話す、出産後すぐでなければ一時保育などを利用してリフレッシュするのも手です。

⑥児の口腔の形態と乳頭・乳輪の形態との不適合

 赤ちゃんの口が小さく、それに比べて乳首が大きかったり長かったりすると、初めのうちは授乳が難しいかもしれません。これも③と同じように時間が経てば自然に解決することがあります。それまで繰り返し、赤ちゃんに吸ってもらう、ときには搾乳してあげているうちにうまく飲めるようになるかもしれません。

 以上のようなことを試しても、赤ちゃんはスムーズに飲んでくれるとは限りませんし、授乳するとひどく疲れるという人もいるかもしれません。もしも、ほかの要素によって疲れているとしたら、家族内で家事や授乳以外の役割分担を調整したり、保健師や身近な人に相談したりするのもいい方法だと思います。

 授乳があまりにも負担になったり、イライラしたりするほどなら、いきなり完全ミルク栄養にするのではなく、混合栄養にするのもいいでしょう。それでもつらいようなら、母乳をやめて完全ミルク栄養にしてもいいのです。ただ、母乳をやめることはいつでも可能ですが、一度やめてしまうと母乳は作られなくなっていくので、よく考えてみてくださいね。

 完全母乳栄養にしたかったのに、なんらかの事情でできなかったという女性の中には「自分は失敗した」という挫折感を持つ人もいます。こういう際に「喪失感 (grief)」という専門用語を使うことがあるくらいです。そんなときに、母乳の利点を聞いたり読んだりすると自分が責められているような気がすることがあります。でも、自分を責めるのではなく、できるだけがんばったことをねぎらいましょう。

 授乳だけが子育てではありません。子どもには最上のものを与えてあげたいと思う人も多いでしょうが、いつでもできるとは限りません。時間にも予算にも努力にも限界があって当然で す。完母をやめたとしても、混合にしたとしても、完ミにしたとしても、「私はできる範囲でがんばった」という自信を持ってくださいね。

※1 柳澤美香『母乳育児スタンダード 第2版』日本ラクテーション・コンサルタント協会編医学書院2015 p214

※2 Blair ps et.al:Bed-Sharing in the Absence of Hazardous Circumstances: Is There a Risk of Sudden Infant Death Syndrome? An Analysis from Two Case-Control Studies Conducted in the UK Published online 2014 Sep 19.

  • 出典

    新装版 産婦人科医ママと小児科医ママのらくちん授乳BOOK
    宋美玄・森戸やすみ著、内外出版 ※情報は掲載時のものです
    https://www.naigai-p.co.jp
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