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羊水過少

【医師監修】羊水過少とは?原因や治療について

妊娠後期の羊水はおもに赤ちゃんが飲み込み、吸収することで一定の量に保たれています。
ところがまれに、羊水の量が多くなりすぎたり、少なすぎたりすることがあります。
今回は羊水の量が通常より少なくなる羊水過少についてお伝えします。
妊娠後期の羊水はおもに赤ちゃんが飲み込み、吸収することで一定の量に保たれています。
ところがまれに、羊水の量が多くなりすぎたり、少なすぎたりすることがあります。
今回は羊水の量が通常より少なくなる羊水過少についてお伝えします。

羊水のはじまり

妊娠初期の羊水は羊膜(赤ちゃんを包む膜)と、妊娠中のママの血液から作られていると考えられています。

妊娠の中期以降になると、大部分は赤ちゃんが排出した尿になります。

羊水過少とは?

羊水の量は個人差が大きく、時期によってもその量は変わります。

妊娠週数が進むにつれて量が増え、妊娠30週前後でピークとなりますが、出産が近くなると少し減ります。

羊水が異常に少ないものを羊水過少といい、だいたい100ml以下程度とされています

羊水過少の原因は?

羊水過少のおもな原因は、お腹の赤ちゃんのおしっこが減ることや、前期破水などで羊水が漏れ出てしまうことが挙げられます。原因不明のケースもあります。

妊娠中期以降では約半数がお腹の赤ちゃんの異常によるもの、約3割が前期破水です。妊娠後期では前期破水や胎盤機能不全によるものが多いとされています。

お腹の赤ちゃんのおしっこが減る原因は?

お腹の赤ちゃんの腎臓や尿管の先天性の異常によるものと、胎盤の血流が減ることによるものが挙げられます。

比較的まれなケースですが、たとえば先天的に腎臓がない、腎無形成(じんむけいせい)という病気があります。片側の腎無形成の場合では気がつかないこともありますが、両側ではおしっこが作られません。羊水が少ないことによりお腹の赤ちゃんが子宮の壁に圧迫され、順調に育たなくなってしまいます。さらには肺が成熟しなかったり、特徴的な顔つきになったりします。このように腎臓の病気から羊水過少となり、さまざまな症状があらわれることをポッター症候群といいます。

また多嚢胞性異形成腎(たのうほうせいいけいせいじん)といって、正常な腎臓の組織が作られずに、腎臓の働きができない場合もあります。

尿管の異常では、尿路が閉塞している場合、おしっこが作られても排出ができません。おしっこが下に流れていかないため、腎臓のおしっこが溜まる腎盂(じんう)という部分が腫れてしまう、水腎症(すいじんしょう)という状態となることがあります。

胎盤の血流が減ることによるものでは、一卵性双生児で、双胎間輸血症候群(そうたいかんゆけつしょうこうぐん)となった場合があります。お腹の2人の赤ちゃんが、一つの胎盤から受け取る血液と酸素の量のバランスが崩れ、供血児(受け取る血液量が少ない方のお腹の赤ちゃん)は受け取る血液量が少ない分、尿量も減り羊水量が減ります。

胎児発育不全(※)やママが妊娠高血圧症候群となった場合は、お腹の赤ちゃんが低酸素状態になることがあります。重要な臓器である脳に酸素を運ぶために、脳の血流量を増やしたぶん、腎臓の血流量が減りおしっこが減り羊水過少となることがあります。

ママが非ステロイド系の消炎鎮痛薬やACE阻害薬といった種類の血圧を下げる薬を使用していた場合もお腹の赤ちゃんのおしっこの尿量を減らす作用があります。

※胎児機能不全:お腹の赤ちゃんが元気とは言えない状態

前期破水とは?

前期破水とは陣痛が来る前に破水してしまうことをいいます。羊水の流出が少量ずつの場合、ママが気がつかないこともあります。

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羊水過少の診断は?どうやってわかるの?

現在、羊水の量を直接測定する検査はほとんど行われていません。

羊水の量は、経腹超音波(お腹のエコー)検査で評価します。

評価の方法には、羊水ポケット法と、羊水インデックス法があります。

羊水ポケット法(AFP)とは?

超音波プローブという機械をママのお腹にあて胎内を画像で映し出し、子宮の中でお腹の赤ちゃんやへその緒(臍帯)を含まない部分に円を描きます。一番大きな円が描けるところを選ぶイメージです。

その円の一番大きな直径が8cm以上が羊水過多、2cm以下が羊水過少と診断されます。

羊水インデックス法(AFI)とは?

ママのお腹(子宮)のエコー画像を上下左右に4つに分けて、それぞれお腹の赤ちゃんやへその緒を含まない一番深い場所を測ります。

4つの深さをすべてを足して24〜25cm以上が羊水過多、5cm以下が羊水過少と診断されます。

羊水過少の治療

原因によって治療の方法が異なります。

もともと赤ちゃんの腎臓がない腎無形性では根本的な治療方法がなく、経過については主治医とよく相談していく必要があります。

しかし、お腹の赤ちゃんに異常がみられた場合でも治療が行えるケースもあります。たとえば尿路の閉塞の場合は、お腹の赤ちゃんの膀胱から羊水腔に尿を出すカテーテル(管)を入れる治療があります。病状が進行する妊娠20週以前に行うことが望ましいとされています。

ママが妊娠高血圧症候群などの場合はその治療を行います。ママが使用していた薬による影響の場合は使用を中止します。

羊水過少の影響は?

羊膜索症候群(ようまくさくしょうこうぐん)

妊娠初期に羊膜が裂けてしまうことによりその羊膜がひも状となり、お腹の赤ちゃんにからみついてしまうことがあります。

羊膜索症候群といい、からみついた手足や体の部分に奇形を生じることがあります。

関節の拘縮(こうしゅく)や手足の変形

羊水が少ないぶん、子宮の中は狭くお腹の赤ちゃんは子宮の壁に圧迫されます。

自由に動き回れず関節が硬くなって動きが悪くなってしまったり、手足が変形してしまうことがあります。

肺がうまく育たない(肺の低形成)

羊水は肺を成熟させるうえで重要な役割をしています。羊水が少ない状態が長く続くと、お腹の赤ちゃんの胸や肺が圧迫されたり、呼吸様運動(こきゅうよううんどう)(※)が行えなくなったりします。肺が十分に作られていないと出生後に呼吸がうまく行えず、命に関わることがあります。

※呼吸様運動:お腹の赤ちゃんはママの胎盤からへその緒を通して酸素をもらっていて、自分の肺で呼吸はしていません。しかし羊水を飲み込んで肺に入れたり出したりして、ママのお腹にいる間からまるで呼吸をしているかのような胸の動きをしています。

臍帯(へその緒)の圧迫による低酸素状態

子宮の壁に臍帯が圧迫されてしまい、お腹の赤ちゃんへの血流が途絶えてしまい、酸素不足になってしまうことがあります。

産婦人科医・吉村先生からのメッセージ 羊水過少で悩むママへ

羊水過少でお腹の赤ちゃんの異常が診断された場合、ときにママとパパは厳しい選択をしなければならないことがあります。一緒によく考え、決断していく必要があります。

何かに気をつけていればよかった、というわけではなく、何をしたのがいけなかったなどと自分を責めてしまうことはよくありません。わからないことや、不安なことは抱え込みすぎずに主治医によく相談しましょう。

また前期破水では早めに受診をする必要があります。定期的な診察を欠かさず、もし「いつもと違うな」と思うことがあれば迷わず受診し、医師に相談しましょう。

参考:

  • 武谷 雄二(監修)、上妻 志郎(監修)、藤井 知行(監修)、大須賀 穣、「第3版プリンシプル産科婦人科学2 産科編」株式会社メジカルビュー社、2017年

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写真提供:ゲッティイメージズ

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