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【医師監修】 分娩麻痺とは 下位型など気になる分類や発生頻度、治療法は?

【医師監修】分娩麻痺とは 下位型など気になる分類や発生頻度、治療法は?

「分娩麻痺」という状態は出産時に発生したと考えられる神経麻痺のことで、赤ちゃんの腕や指先の動きが悪く、将来への不安を感じることも。今回は分娩麻痺の基本知識や治療法をご紹介します。
「分娩麻痺」という状態は出産時に発生したと考えられる神経麻痺のことで、赤ちゃんの腕や指先の動きが悪く、将来への不安を感じることも。今回は分娩麻痺の基本知識や治療法をご紹介します。

分娩麻痺とは

分娩麻痺は分娩時に、赤ちゃんが産道を通る際の圧迫や、赤ちゃんに力がかかったことで麻痺が生じる状態です。

分娩麻痺の基本情報

分娩麻痺には、上位型、下位型、全型があり、代表的なのが上位型の腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)になります。

赤ちゃんは狭い産道を通り抜けるため、肩を小さくたたんだ屈位(あごを引いて胸に近づけた姿勢)で回旋しながら下りてきます。

首には脊髄から腕や指先につながる腕神経叢(わんしんけいそう)という5つの神経根(脊髄から出る神経の根本部分)からなる神経の束があります。

分娩時に肩が産道に引っかかった状態で分娩が進行するなど、赤ちゃんの神経の束が傷つくことで麻痺が起こります。

分娩麻痺の症状

分娩麻痺の症状は、ダメージを受けた場所や度合いにより異なります。

麻痺が起こる場所によって下記のように分類されます。

1. 上位型麻痺

上位型麻痺は、腕神経叢でも頭に近い神経根が損傷したときに起こる代表的な分娩麻痺です。Erb麻痺(エルブまひ)ともいいます。

肩や肘の動きが制限される状態になります。

2. 下位型麻痺

下位型麻痺は手首を反らす運動、指を曲げる運動を支配する神経根が傷つくことで起こり、手首や指先が動かなくなります。

Klumpke麻痺(クルンプケまひ)ともいいます。

3. 全型麻痺

全ての神経根に損傷を受けたときに生じるのが全型麻痺です。多くの場合、腕全体に麻痺が生じます。

腕神経叢へのダメージが少ない場合、症状は一時的なもので、時間がたてば自然に回復するケースがほとんどです。多くの場合、1週間以内に自然回復します。

しかし、ごくまれに神経根が完全にちぎれた状態になり、手術が必要になる場合もあります。

分娩麻痺が発生する原因

分娩中に腕神経叢を損傷する原因の一つに、赤ちゃんが4,000gを超える巨大児の場合が挙げられます。巨大児になる要因となるのは、ママの糖尿病、体重増加、過去に巨大児を産んだ経験、妊娠予定日を大幅に過ぎた過期産などです。

巨大児は、頭よりも肩幅のサイズが大きいことが多く、産道で引っかかる「肩甲難産(けんこうなんざん)」のリスクが高まるとされています。しかし一方で、肩甲難産の半数は4,000g未満の巨大児でない赤ちゃんが占めるともいわれています。

また、肩甲難産ではない吸引・鉗子分娩や、帝王切開など、赤ちゃんに強い力が加わることがなかった分娩でも麻痺が起こった例が報告されており、必ずしも分娩中に力が加わることだけが分娩麻痺の原因でないことも指摘されています。

分娩麻痺の発生頻度

分娩麻痺は1週間以内に自然回復する軽症、運動機能に障害が残る重症とさまざまな状態がみられます。

整形外科の受診が必要な重症例だけみると発生頻度はそれほど高くないといわれています。

分娩麻痺の検査と治療

分娩麻痺を診断するための検査

検査は、状態によって下記のような内容が行われます。

  • 頸椎をレントゲン撮影する脊椎単純X線検査
  • 神経と筋肉の活動を調べる針筋電図検査
  • 脊髄に造影剤を入れてX線やCT撮影を行う脊髄造影検査
  • 磁場と電波、コンピュータを用いて画像撮影をするMRI検査

まずは安静に。その後リハビリをスタート

分娩麻痺に対しては、まずは安静にすることが大切です。

腕を無理に動かさないよう気をつけて過ごしましょう。

そのあと関節が固くならないよう、専門医を受診して訓練を始めます。

この時点で回復していると、後遺症が残る可能性が低くなることもあります。機能改善のため、幼児期にも継続してリハビリテーションが必要です。

分娩麻痺の手術

生後1ヶ月以上経っても腕の動きが改善しないときは、詳しい検査を行い、神経を修復するための手術での治療を考えます。

また、神経手術後の回復が思わしくない場合、筋肉や腱を移動させて効率的に動けるようにする二次再建手術が行われる場合があります。

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分娩麻痺は多くの場合、軽症で自然に回復するといわれています。毎日のお世話の中で赤ちゃんの腕の状態を確認しつつ、経過を見守ってあげましょう。

いつ頃からどんなふうに動くようになったかを記録しておくと、診察の際に役立ちます。スマートフォンなどで動画や写真を撮っておくのもおすすめです。定期的に記録しておきましょう。

参考:

  • 公益社団法人 日本産婦人科学会、公益社団法人 日本産婦人科医会(編集・監修)、「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」、2020年
  • 医療情報科学研究所(編)、「病気がみえる vol.10 産科 第4版」、株式会社メディックメディア、2018年

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