【医師監修】妊娠後期に息苦しくなるのはなぜ?貧血との関係は? | MAMADAYS(ママデイズ)
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【医師監修】妊娠後期に息苦しくなるのはなぜ?貧血との関係は?

【医師監修】妊娠後期に息苦しくなるのはなぜ?貧血との関係は?

もうすぐ赤ちゃんに会える!とワクワク感がつのる妊娠後期。けれども、おなかは大きく重く、息苦しさを感じる時期でもあります。この記事では妊娠後期の息苦しさの原因や、その対処法をお伝えします。
もうすぐ赤ちゃんに会える!とワクワク感がつのる妊娠後期。けれども、おなかは大きく重く、息苦しさを感じる時期でもあります。この記事では妊娠後期の息苦しさの原因や、その対処法をお伝えします。

妊娠後期の息苦しさの原因は?

妊娠後期はおなかの赤ちゃんが急激に成長する時期です。わずか3ヶ月間で赤ちゃんの体重はおよそ1.5~2kgも増えます。この時期のママが息苦しさを感じる原因は、大きく分けて2つあります。

一つはどんどん大きくなる赤ちゃんに物理的に圧迫されること、そしてもう一つは赤ちゃんにたくさんの酸素と栄養を届けるため、ママの体に負担がかかることです。

大きくなった子宮に圧迫される

おなかの赤ちゃんが大きくなるのにともない、子宮はどんどん大きくなり、ママの内臓を物理的に圧迫します。

妊娠8~9ヶ月になると、子宮はみぞおちあたりまで大きくなります。これにより、肺や心臓も横隔膜ごと押し上げられ、散歩や軽い運動をしただけでも動悸や息切れを感じることもあるでしょう。また、おなかの血管も子宮に圧迫され、足などから血液が心臓に戻りにくくなります。

血液量が変化する

大きくなる赤ちゃんに酸素と栄養を運ぶため、妊娠後期のママの体には妊娠前の1.5倍(※1)の血液が流れます。心臓が1分間に脈を打つ回数は、妊娠前より10~20%増加し(※2)、心臓から押し出す血液の量も増えます。また、息を吸う量・吐く量も妊娠週数にともなって増えてきます。少し動いただけでも動悸がしたり、息苦しさを感じるのはこのためです。

しかし、血液の水分が増える量に比べて赤血球の増加は少ないため、水分の多い血液となり、貧血になりやすくなっています。また、ママが食べ物からとった鉄分は赤ちゃんの成長に多く使われるため、ママ自身の体は鉄分が不足しやすい状態となるのです。鉄は体内で合成することはできません。体外から不足分を取り入れる必要があります。特に出血していなくともママの体から失われるものですから、適切な補充が妊娠後期のママに必要です。

貧血になると、全身に酸素を運ぶために普段以上に心臓が働くため脈が速くなり、動悸や息切れなど息苦しさの原因になります。

※1、2
『日本臨床麻酔学会誌 vol.38 No.4』「産科麻酔 妊婦の生理学」2018年より

妊娠後期の貧血、おなかの赤ちゃんへの影響は?

妊娠中は赤ちゃんに十分な酸素や栄養を運ぶことが優先されます。そのたためママ自身の体に栄養が回らず、母体の心臓に負担がかかるうえ、来るべき出産時の出血に備える力が失われてしまいます。胎児にも母体にも十分な酸素を全身に供給するためには赤血球が必要であり、赤血球をつくるためには鉄分が不可欠なのです。

息苦しいときの対処方法は?

息苦しさを感じた場合はどうすればよいでしょうか?参考までに、いくつかの対処法をご紹介します。

  • ゆっくり休む

息苦しさを感じたら、まずは椅子に座るか、横になって休みましょう。横になるときは、仰向けだと子宮の重みがおなかの大きな血管を圧迫してしまい、血液の流れを妨げてしまう恐れがあります(仰臥位[ぎょうがい]低血圧症候群)。仰向けに寝ることは避けましょう。右向き左向きはどちら向きでも妊婦中のママが楽であれば構いません。体の血管の構造上は左向きが勧められています。

  • 食生活を見直す

貧血を予防するために、鉄分を十分にとりましょう。鉄分はビタミンCと一緒にとると吸収率が高まります。また、鉄分やビタミンCに限らず、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。

妊娠中の食事については、こちらの記事を参考にしてみてください。

妊娠中の食事は、元気な赤ちゃんの体を作るためにも、ママの体調を維持するためにも、とても重要です。「バランスよく食べるように」といわれますが、具体的には何を食べればよいのか、また、注意したい食べ物はどんなものかなどを知っておきましょう。
  • 食事は小分けにする

食べると消化吸収のために大量の血液が消化管に必要とされます。母体のほかの部分への血液の割り当てが減るため、心臓はより多くの血液を体にまわすために働くため、息苦しさを感じることがあります。食事は少量ずつ何回かに分けてとるか、消化のよいものを食べるようにするとよいでしょう。

妊娠後期の息苦しさ、こんな症状には注意!

妊娠後期の息苦しさで、思いもよらない病気が隠れていることがあります。参考までにいくつかご紹介します。

  • 脈拍の異常による息苦しさ

不整脈がおきていることもあります。脈がとぶ、失神、いわゆるたちくらみ(脳貧血や低血圧などとよばれたりもする)のなかには 自分でも脈の異常があることを知らなかったということもあります。

  • 急に息苦しくなり、胸が痛む

血栓という血の塊が血管(主に下肢にできやすい)内にできていて血流にのって肺の静脈に戻ってきて詰まると大変です。肺血栓塞栓症と呼ばれ、早急に治療が必要で、妊娠中および産後に起こりやすい疾患とされています。

  • 安静にしているのに息切れする

動いていなくても息切れがする、肩で息をする、横向きでは苦しくて眠れない、全身がむくみがひどくなり心不全の状態がおきることがあります。「周産期心筋症」という病名ですが、これは大変まれな疾患です。

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妊娠後期の息苦しさは、赤ちゃんの成長のためにママががんばっている証でもあります。しかし、日常生活に支障が出るほど重い息苦しさを感じるときには早めに医師に相談しましょう。

参考:

・医療情報科学研究所(編)、『病気がみえる vol.10 産科 第4版』、株式会社メディックメディア、2018年

・「周産期心筋症」(国立循環器研究センター病院)

・「産科麻酔 妊婦の生理学」(日本臨床麻酔学会 vol.38)

・「貧血の分類と診断の進め方」(日本内科学会雑誌第104巻第7号)p.1376

写真提供:ゲッティイメージズ

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