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母乳が出ない……出ない原因や対策はある?

【医師監修】母乳が出ない…出ない原因や対策はある?

「母乳が出ない」という悩みは、授乳中のママにとってとても辛いことのひとつです。
平成27年に厚生労働省が行った調査では、回答者の6割以上が「母乳が足りているのかわからない」「母乳が不足ぎみ」と回答しました。母乳が出ない原因や、対策方法についてみてみましょう。
「母乳が出ない」という悩みは、授乳中のママにとってとても辛いことのひとつです。
平成27年に厚生労働省が行った調査では、回答者の6割以上が「母乳が足りているのかわからない」「母乳が不足ぎみ」と回答しました。母乳が出ない原因や、対策方法についてみてみましょう。

個人差がある母乳の出方

母乳の出方には個人差があり、たくさんのママが母乳の出に不安や悩みを感じています。
母乳はどのようにできて、出る・出ないの差にはどんな原因があるのでしょうか。

母乳とは

母乳は赤ちゃんの完璧な食事です。栄養素以外に、母乳でしか赤ちゃんに与えることのできない免疫物質が含まれています。出産してからおよそ3週間の母乳は初乳(しょにゅう)といわれ、とくに赤ちゃんを守り、成長に必要な成分に富んでます。

母乳が出る仕組み

母乳はママの血液からつくられています。脳の中の下垂体から出たプロラクチンというホルモンが乳腺に作用して母乳をつくります。

母乳ができる仕組みや母乳の成分について、詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください。

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母乳の色は普段は白からやや黄色ですが、時折母乳に血液が混じる場合があります。血が混ざった母乳を子どもに飲ませていいのか心配になりますよね。今回は母乳に血が混じっても大丈夫なのかという疑問や、母乳と血液の関係について見てみましょう。

母乳の出には個人差がある

出ないことを責めないで

「母乳が出ない」という悩みは、授乳中のママにとってとても辛いことです。
平成27年に厚労省が1,200名ほどの0~2歳児の保護者に行った調査では、6割以上が「母乳が足りているのかわからない」「母乳が不足ぎみ」と回答しています。
たくさんのママが母乳の出に不安を感じているのです。

母乳の出には個人差があるといわれています。母乳の出を気にしてストレスを抱えてしまうのは避けたいものです。

母乳の出方には、乳管が開通しているか、していないかの違いも

ママの血管が乳腺組織に分布して、乳腺組織が母乳をつくります。
その母乳は乳腺から導かれて、乳頭に到達し、開口部から乳汁(母乳)が出てくるのです。この乳腺組織の量には個人差があるといわれています。

またこの母乳の通り道が「乳管(にゅうかん)」です。
はじめてママになるときは乳管はまだ十分発達していないため、乳汁をスムースに乳頭まで運ぶことができていないことがほとんどです。
乳腺で作られる量と乳管へ運ばれる量にアンバランスがおきることで、授乳のトラブルになるのです。
たとえばつくられた母乳の量が赤ちゃんの飲む量よりも多くなり乳管に母乳が残ってしまうと、母乳がつまって出なくなります。
赤ちゃんに繰り返し頻回に母乳を飲ませることが乳腺と乳管を発達させ、このアンバランスを改善させることになります。
つまり母乳をたくさん出す方法は、一日何回も赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうこととされています。

初産と経産婦でも違いがある

初産ではおっぱいが張り、うまく母乳をつくれないことがあります。
乳腺の開通に時間がかかり、母乳が出るのに時間がかかることもあります。
一方、経産婦では体が母乳をつくる機能を覚えており、乳腺の開通がスムーズなため、早いうちに授乳が軌道に乗ります。
ただ、2人目以降の授乳でママの側の準備ができていても、赤ちゃんにとっては初めての授乳なので、上手におっぱいを吸えないこともあります。
赤ちゃんの個人差に合わせて焦らずしっかり吸わせてあげましょう。

母乳が出ないときに考えられる理由は?

ママの栄養不足や疲れ、生活習慣などの影響

乳管のつまりや栄養不足が考えられます。貧血や水分不足、体の冷え、血行不良も母乳が出ない原因の一つになります。
また、喫煙や薬剤の影響や、育児のストレスや疲れも母乳の出に影響するといわれています。

赤ちゃんが上手におっぱいを吸えないことによる影響

産後に母乳が出にくい原因としては、赤ちゃんが上手におっぱいを吸えないことが考えられます。うまく吸えないと乳腺が刺激されず、母乳の量が増えません。

産後~4ヶ月頃や6ヶ月頃に母乳が出にくい理由は?

生後4ヶ月頃になると、赤ちゃんの首がすわり、おっぱい以外のことに興味を持ち始めます。おっぱいを飲む時間が減り、母乳が出にくくなるかもしれません。

産後6ヶ月頃になると赤ちゃんが遊びに興味を持ち、活動量が増え、おっぱいを飲まずに眠ってしまうことがあります。
中には離乳食を始める赤ちゃんもいて、おっぱいを飲むことが減る時期です。

病的なもの

母乳が出ない原因として、まれに乳腺の形成不全やバセドウ病や卵巣の病気など内分泌(ホルモン)の病気の可能性があります。

こんな症状に注意

「母乳が出ない」「母乳の色が違う」などの症状は、病気のサインかもしれません。
出産3日目くらいでは、1日約40ml出れば十分です。少ないようですが、赤ちゃんの胃袋も小さいのです。
初めは黄色がかったクリーム色です。だんだん乳白色となり、4週には約800mlへと量が増えます。
母乳が足りているかどうかは2週間後健診、一ヶ月健診などを目安に助産師に相談していきましょう。

母乳の色は通常黄白色から乳白色~透明ですが、ピンクや赤い場合は、血液が混じっていると考えられます。早めに乳腺外来を受診しましょう。

出ないときの対処法

食事内容を意識する

母乳はママが食べたものが腸管から吸収されて血液中に入り、その血液が乳腺にいってできるので、栄養バランスの取れた食事をとることが大切です。
カロリーについていえば授乳中のママは、妊娠前より350kcal多く摂取することが推奨されています(※1)。

これは妊娠前の食事に軽食を一食分プラスしてもよい計算です。ただし、チョコレートやケーキなどのお菓子は脂肪分が多いので乳腺をつまりやすくするため控えましょう。
カロリーを増やすためには、脂肪よりも白米などの炭水化物で調節するのがよいでしょう。

もちろん三大栄養素のみならずビタミンや鉄、亜鉛、ヨウ素など全体のバランスが大事です。

※1 出典:「妊娠・授乳婦 授乳婦の付加量に対する考え方」(厚生労働省)より

飲ませ方を工夫する

母乳を与えるときには、腕の下や背中に枕を入れて、ママが楽な姿勢をしましょう。ママのおなかと赤ちゃんの胸がぴったり密着するように抱っこします。
母乳を飲ませるときに、抱っこの方向で片方のおっぱいから飲ませることが多かったり、赤ちゃんの顔の向きに合う同じ乳腺から飲み続けたりすると、飲み残しが出てきます。
両方のおっぱいを交互に、できるだけ違う向きから飲ませるようにしましょう。

おっぱいの与え方については、こちらの記事も参考にしてみてください。

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生活習慣の工夫

母乳を出す鍵となるホルモン(プロラクチン)は、ママが十分に睡眠を取ることで分泌が増えます。
ホルモンの分泌を促すために十分な睡眠を取ることが理想ですが、なかなかそうも行かない場合もありますよね。
家事を家族にお願いするなどの工夫をして、できる限り睡眠時間を確保しましょう。
睡眠不足では体の抵抗力が落ち、細菌に感染しやすくなるため、化膿性乳腺炎にかかりやすくなります。
生活リズムを整えることが母乳の出をよくすることにつながります。

マッサージでおっぱいをやわらかくする

乳頭・乳輪部が固いため、赤ちゃんが吸いにくいこともあります。助産師さんに相談し、おっぱいをマッサージしてやわらかくしましょう。

ミルクに頼っても大丈夫

どうしても母乳が出ないときは頑張りすぎず、粉ミルクに頼ってみてもよいでしょう。最近の粉ミルクは改良がすすみ、母乳に近い成分が入っています。
最近は液体ミルクなどのバリエーションも広がっているので、災害時など衛生的に必要になる場合もありえます。
母乳だけにこだわらず、必要に応じて長い目でみながら、賢い選択をしていきましょう。
母乳が出ないと心配になることもあるかもしれませんが、母乳の出方には個人差があります。頑張りすぎず、授乳期をストレスなく乗り越えましょう。

参考:

・医療情報科学研究所(編)、『病気がみえる vol.10 産科 第4版』、株式会社メディックメディア、2018年

・横尾京子,中込さと子,荒木奈緒編「ナーシンググラフィカ母性看護学①母性看護実践の基本,2016年第4版」(メディカ出版)

・「平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要」(厚生労働省)、2021年1月閲覧

・「日本人の食事摂取基準 2.妊婦・授乳婦」(厚生労働省)、2021年1月閲覧

・「厚生労働省, 母乳及び乳児用調整粉乳の成分組成と表示の許可基準.,09-2.【資料8:児玉構成員】別表1・2」(厚生労働省)、2021年1月閲覧

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