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会陰切開の痛み、いつまで続く?

【医師監修】会陰切開の痛み、いつまで続く?

会陰切開(えいんせっかい)は、分娩の際に行われる可能性がある処置のひとつです。会陰切開について事前に知っておき、お産に向けての心構えをしておきましょう。
会陰切開(えいんせっかい)は、分娩の際に行われる可能性がある処置のひとつです。会陰切開について事前に知っておき、お産に向けての心構えをしておきましょう。

会陰切開とは?

腟口と肛門の間の部分を「会陰(えいん)」といいます。会陰切開とは、分娩の際に会陰の一部を切開する処置のことです。

会陰切開はどんなときにするもの?

会陰切開は、会陰裂傷(会陰が裂けてしまうこと)の予防や、胎児の通り道である産道のスペースを拡張することで分娩をよりスムーズにし、母子の安全を確保するために必要と判断された場合に行われる処置です。すべての妊婦に行われるものではありません。

会陰切開が必要になるのは、以下のようなときです。

● 会陰の伸びが不十分で、肛門括約筋(こうもんかつやくきん、肛門をしめる筋肉)や直腸の壁まで及ぶ会陰裂傷が予想される

● 胎児の健康状態が悪化しており、会陰の抵抗が強いため胎児の頭が出てこない

● 器械分娩(鉗子(かんし)や吸引カップなどの器具を使用する分娩)の必要がある

● 巨大児(4,000g以上)や、胎児の肩が恥骨に引っかかり出られない可能性がある

● 低出生体重児(2,500g未満)や、胎児に脳の疾患が疑われる場合など、胎児の頭にかかる負担を軽減したい

会陰切開の方法は?

一般的に、会陰切開は局所麻酔をしてから、医療用のはさみを使用して行います。会陰切開の方法は、おもに「正中切開法(せいちゅうせっかいほう)」と「正中側切開法(せいちゅうそくせっかいほう)」の2つで、分娩の状況によって医師が選択します。

●正中切開法

肛門に向かって縦にまっすぐ切開する方法です。特長としては、少ない出血で済むことや、傷の治りがよいことなどが挙げられます。

●正中側切開法

肛門括約筋を避けて、斜めに切開します。正中切開法に比べ出血が多く、術後の痛みを強く感じますが、肛門や直腸に及ぶほどの深い会陰裂傷を起こす可能性は低くなるのが特徴です。

会陰切開の傷は、赤ちゃんが産まれて分娩が終了した後、縫合されます。

こちらの記事も参考にしてみてください。

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会陰切開後の傷はいつまで痛む?

会陰切開後は、傷自体の痛みや縫合した糸が引きつるために、抜糸するまでは痛みが生じやすいです。ただし、会陰切開を正中切開法で行った場合は、比較的痛みが軽いといわれています。

会陰切開の傷口は、通常4~5日程でほぼくっつき、退院前に抜糸します。抜糸後は、痛みが徐々に落ち着いていきます。
なお、会陰を縫合する場合は短期間で自然に溶ける糸を使用している施設が多いです。その場合、抜糸をしないことが多いですが、施設によっては抜糸をすることもあります。
溶ける糸はさまざまな種類があり、どのくらいで溶けてなくなるかは種類によって異なります。
会陰切開後は傷に負担がかからないように、物を持ち上げたりしゃがんだりするときなどは注意しましょう。

会陰切開後の傷はどのぐらいの期間で治る?

会陰切開の痛みが継続する期間については個人差がありますが、産後1ヶ月頃までに痛みや違和感が消えるママが多いようです。
我慢できないほどのひどい痛みや、痛みや違和感が軽減する傾向にない場合は、早めに医師に相談しましょう。
また、処置後(多くは数時間以内)に痛みがどんどん増す時は、傷口に血まめ(血腫、けっしゅ)ができていることがありますので、その場合もスタッフに早めに申し出るとよいでしょう。

市販の痛み止めの薬を使用して、痛みを早く取り除きたいと思うママもいるでしょう。
しかし、薬によっては授乳中のママが服用すると、母乳を通して赤ちゃんに影響を及ぼす成分が含まれているものもあります。
市販薬を自己判断で服用することは避け、医師に薬の処方を相談しましょう。

会陰切開後、傷跡の硬さが気になる場合もあるかもしれません。
産後3ヶ月頃までは特に硬く感じられますが、一般的には産後半年頃までに硬さが減り、徐々にやわらかくなっていきます。

会陰切開後の傷の痛みが再発してしまう場合はどうしたらよい?

会陰切開後、落ち着いていた痛みが再び現れたり、傷口が開く・腫れるなどの症状が現れたりした場合は、傷口から侵入した細菌による感染症の可能性も考えられます。できる限り早めに病院を受診しましょう。

会陰切開後は、傷口を清潔に保つことが大切です。

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会陰切開を行った場合、傷の痛みがある間は日常生活で不便に感じることも多いかもしれません。座ったり寝たりするときは、円の中央に穴の開いたドーナツ形のクッションの利用や楽な姿勢を見つけるなど、痛みを和らげる工夫をしましょう。

参考:

・医療情報科学研究所(編)、『病気がみえる vol.10 産科 第4版』、株式会社メディックメディア、2018年

・「出産に際して知っておきたいこと 会陰切開について」(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)

・「新 私たちの暮らしと医療機器 第16回 組織と組織をきれいにつなぐ〜吸収性縫合系〜」(日本医療機器産業連合会)

写真提供:ゲッティイメージズ

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