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【医師監修】陣痛の始まりがわからないママもいる?

【医師監修】陣痛の始まりがわからないママもいる?

陣痛の痛みは「我慢できないほど痛い」「鼻からスイカが出てくるようなもの」などといわれます。しかし、陣痛が始まったことに気づかないママもいるのです。陣痛とは何か、どのようであれば陣痛だと判断できるのかなどについてご紹介します。
陣痛の痛みは「我慢できないほど痛い」「鼻からスイカが出てくるようなもの」などといわれます。しかし、陣痛が始まったことに気づかないママもいるのです。陣痛とは何か、どのようであれば陣痛だと判断できるのかなどについてご紹介します。

陣痛の始まりがわからないケースもある?

初めて出産するママにとって、陣痛は未知の経験。痛みの感じ方やこれまでに経験している痛みの程度なども、人によってさまざまです。陣痛には4種類あり、進行度合によって痛みの強さが違います。

陣痛の始まりは「生理痛」や「おなかを下したときの痛み」に似ています。普段から生理痛や腹痛に悩まされることが多いママは、「普段と同じぐらいの痛み」を腹痛なのか陣痛が始まった痛みなのか、どちらかわからないこともあるようです。

陣痛の種類は4つ

「陣痛」とは、妊娠期から出産後に子宮が収縮するときの痛みのことで、4つの種類があります。

  • 妊娠陣痛

妊娠中に起こる軽い子宮収縮を「妊娠陣痛」といいます。不規則で、通常、痛みはほとんどありません。

  • 前駆陣痛(ぜんくじんつう)

お産が近づいた妊娠末期になると、本格的な陣痛が始まる前段階として、おなかが張ることが多くなり、不規則な痛みを感じるようになります。これが「前駆陣痛」です。

張りや痛みが規則的になり、「陣痛」かと思っても、また痛みが遠のいてしまったというときは「前駆陣痛」と呼びます。

  • 分娩陣痛

一般的に「陣痛」と呼ばれ強い痛みのイメージで知られているのがこの「分娩陣痛」です。これは、分娩開始から分娩終了までの間、胎児を母体の外へ押し出すために発生する、規則的で次第に強まっていく子宮の収縮です。胎児を娩出するときの陣痛が、最も強いものとなります。

  • 後陣痛

胎児が母体から出たあとに、胎盤が子宮からはがれて出てきますが、その際子宮内の傷ついた血管を圧迫して止血し、子宮の回復を促すための陣痛が「後陣痛」です。不規則な痛みが、出産後3日ぐらい続きます。経産婦の場合は、初産婦よりも子宮の疲労が大きくなるため、元に戻すための後陣痛が強くなります。

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出産予定日が近づくにつれて、陣痛はいつくるだろうかと不安になるママもいるかと思います。陣痛が始まる前に現れやすい兆候を知り、お産に向けて心の準備をしましょう。

陣痛の始まり方は?

痛みが繰り返し感じられるようになったら、痛みの間隔を計ってみましょう。約10分間隔、あるいは1時間に6回以上の痛みを繰り返し感じるようになると、陣痛(分娩陣痛)の始まりです。

1回の陣痛は、弱い痛みから始まって次第に強くなり、ピークを越えるとまた弱まってきます。数分間痛みが治まったあと、また次の陣痛の波がやってきます。

始めのころは1回の陣痛は20秒間程度で、間隔はさまざまです。分娩が進むにつれて、1回の陣痛の時間は長く、間隔は短くなってきます。痛みが1分間以上続き、間隔が1~2分ぐらいになる頃には子宮口が全開になっていることが多く、赤ちゃんが下がってきます。

陣痛の始まり方について、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

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いつくるのか、どの程度の痛みなのかなど、初めての妊娠・出産であれば、なおさらわからないことも多い陣痛。陣痛がきたとき焦らず行動できるよう、陣痛の間隔や痛みの強さ、陣痛の始まり方について知っておきましょう。

「1時間に6回以上」、あるいは「10分間隔」の規則的な痛みは、お産の始まりの合図です。夜中でも早朝でも、遠慮せずに病院に連絡しましょう。そのほか「なんだかいつもと違う」と感じた場合も、自己判断をせず、医師に診察してもらうようにしましょう。

病院ではどのように「陣痛開始」を判断しているの?

病院では、医学的に陣痛を観察します。まず、ママのおなかに陣痛計をつけ、胎児の状態をみる「胎児心拍数モニタリング」という検査を行います。

陣痛はママだけでなく、胎児にとっても大きな負荷です。

この負荷に対する胎児の心拍数と、子宮の収縮圧(陣痛の強さ)を記録したものが「胎児心拍数陣痛図(CTG)」です。胎児の心拍数そのものの状態と、胎動やママの子宮収縮に対する胎児の心拍数の変化を合わせてチェックすると、分娩の経過と胎児の健康状態がわかります。CTGのほか、赤ちゃんの頭の位置や子宮口がどれだけ開いているかなどを内診して、総合的に分娩の始まりを判断します。

経産婦でも陣痛がわからないケースがある?

初産婦と経産婦では、おおまかに次のような違いがあります。

  • 入院の目安となる陣痛の間隔は、初産婦で5分おき、経産婦で10分おき
  • お産の進む速さは、初産婦で平均12時間、経産婦で平均6時間
  • 子宮口が全開になってから出産までは、初産婦で約60分、経産婦で約30分

とはいえ、痛みの感じ方には個人差があります。また、同じママでも、お産の進み方はそのたびに違うのです。2人目、3人目の経産婦でも、陣痛が始まったかどうかわからないケースがあります。

規則的な痛みを感じたら、陣痛の可能性を考えて、病院に連絡するようにしましょう。

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分娩の始まりには、陣痛の強い痛みが突然くるのではありません。弱く短い、規則的な痛みが、陣痛の始まる合図です。安全な出産のため、少しでもおなかの痛みを感じたらその間隔を計れるように、前もって準備しておきましょう。

参考:

・「日本助産学会 助産用語特別検討委員会案 陣痛」(助産用語特別検討委員会)、2021年2月閲覧

「出産当日におこること」(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)、2021年2月閲覧

「D.産科疾患の診断・治療・管理 20.正常経腟分娩の管理」(日産婦誌60巻10号研修コーナー)、2021年2月閲覧

・医療情報科学研究所(編)、『病気がみえる vol.10 産科 第4版』、株式会社メディックメディア、2018年

写真提供:ゲッティイメージズ

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