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産後の貧血の原因と対処法は?

【医師監修】産後の貧血の原因と対処法は?

少し動いただけでも疲れたり、息切れやめまいを感じたりしているママはいませんか? 何となく感じている「産後の不調」はもしかしたら「貧血」が長引いているからかもしれません。今回は、産後の貧血の原因や対処法についてお伝えします。
少し動いただけでも疲れたり、息切れやめまいを感じたりしているママはいませんか? 何となく感じている「産後の不調」はもしかしたら「貧血」が長引いているからかもしれません。今回は、産後の貧血の原因や対処法についてお伝えします。

貧血とは?

赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の量が減る

貧血とは、血液中の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の量が少なくなった状態のことをいいます。「ヘモグロビン」はたんぱく質と鉄が結びついたものです。血流にのり、体内に酸素を運ぶ役割をしています。

「ヘモグロビン」が少なくなると、体内に酸素が不足した状態となります。

貧血のほとんどが「鉄欠乏性貧血」

貧血は原因によりいくつかの種類に分かれますが、多くは体内の鉄分が不足したことによって起こる「鉄欠乏性貧血」です。

妊娠や出産による貧血もほとんどが「鉄欠乏性貧血」ですが、ほかにもビタミンB12などが不足して赤血球がうまく作られない貧血の場合もあります。

貧血の症状

以下のような症状が代表的です。貧血が続き、体が「ヘモグロビン」の低い状態に慣れてしまうと、自分では症状に気がつかないこともあります。

・動悸、脈が速くなる

・息切れ

・疲れやすい

・頭痛

・顔色が悪い

・まぶたの裏側の赤みが減る

・傷が治りにくくなる 

・爪がスプーン状に反り返るなど

産後の貧血の原因

産後の貧血が長引く原因として以下のようなことが考えられます。

妊娠前から貧血がある

もともと女性は、月経(生理)があるため鉄分が失われやすく男性より貧血になりやすいとされています。さらにダイエットや偏食などにより、食事からも十分にとれていない場合も多くあります。

だれでも妊娠するとママの血液は薄まり、貧血の状態になります。

おなかの赤ちゃんの発育のために、ママの体の血液の量は妊娠する前より約1.5倍増えますが、赤血球は血液中の水分ほどは増えないためです。

妊娠前から貧血があったり、貧血になりやすい食生活が続いたりしていると、妊娠中や産後の貧血を悪化させる可能性があります。

出産による出血が多かった

出産による出血で少なくなった赤血球は、産後約4週間頃には、妊娠していないときの状態に戻るとされています。ただし出血の量が多かったケースでは、産後の貧血が長引く可能性があります。

出産による出血は、産後24時間以内で経腟分娩では500ml以上、帝王切開では1000ml以上で多いとされます。

出産のときの出血は母子健康手帳で確認できます。ただし羊水を含んだ量が記載されている場合など施設によって異なることもあります。

子宮の回復が遅れている(子宮復古不全)

妊娠によりママの子宮筋が伸び切ったり、出産したあとも子宮に胎盤や卵膜などの赤ちゃんの付属物が残っていたりすると、子宮がなかなか元の状態に戻れない「子宮復古不全」という状態となります。

子宮は収縮することで出血を止めるため、戻りが悪いと通常より出血が長引いてしまいます。

月経(生理)の再開

産後月経が再開すると、血液と一緒に鉄分も失われます。月経の量が多い場合はさらに貧血になるリスクが高まります。

月経が再開する時期にはママそれぞれに差があります。

産後の月経はいつ来る?

一般的に母乳をあげていないママは産後6〜8週間程度で月経が再開するとされています。

一方、母乳をあげているママは母乳をあげるときに分泌されるホルモンの関係で、月経の再開は遅くなるとされています。ただし実際にはばらつきがあり、産後2ヶ月程度で再開するケースもあれば、1年以上たってから再開することもあります。

詳しい産後の月経の再開の時期について気になるママは、以下の記事も参考にしてみてください。

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産後の貧血の対処法は?

鉄剤を服用する

貧血の症状のあるママはまず医師に相談してみましょう。

「鉄欠乏性貧血」と診断された場合、鉄剤の服用が必要です。

貧血が進んでいると、食事だけで貧血を改善するのは難しいことがあります。

「ヘモグロビン」の量は性別や年齢により基準となる値が変わります。産後のママは血液検査で「ヘモグロビン」の量が10g/dl以下になると治療の対象になるとされています。

鉄剤が処方されたら、用法・用量を守って服用しましょう。

休息をとりできる限り無理をしない

貧血は体が酸素不足を起こしている状態です。息切れやめまい、頭痛やだるさなど全身に影響を及ぼします。

めまいやふらつきがあるときに無理をすると、転倒につながる可能性もあります。

症状を感じるときには、その場で座る、こまめに休息をとるなどしましょう。

鉄分の多い食品を意識してとる

毎日の食事の鉄分を意識することも大切です。

産後のママ、特に母乳をあげているママは妊娠する前より鉄分を多くとることがすすめられています。

鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があります。「ヘム鉄」のほうが体内で吸収されやすいとされていますが、「非ヘム鉄」も動物性の食品や、ビタミンCと一緒にとると吸収率がよくなるとされています。

「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」が多く含まれる食材

ヘム鉄:レバーやカツオ、マグロなど

非ヘム鉄:豆乳、納豆、大豆、小松菜、ひじきなど

鉄分を多く含む食事については以下の記事も参考にしてください。

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バランスのよい食生活を心がける

鉄分が不足するからと鉄分だけ取ればよい、というわけではありません。

基本的にはバランスのよい食生活が大切です。さまざまな栄養素が血液を作る働きをしたり、鉄分が体内に吸収するのを助けたりしています。

例えば、「ビタミンB12」や「葉酸」は赤血球を作るのを助ける働きをします。「ビタミンC」は鉄の吸収を高める働きをします。

産後の貧血のママにおすすめレシピ

MAMADAYSでも貧血に悩むママにおすすめのレシピをいくつかご紹介します。

鉄分や葉酸が含まれるレシピです。ぜひ参考にしてみてください。

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貧血の症状を感じたら早めに医師に相談しよう

産後の貧血には食事の改善や、休息をとることももちろん大切ですが、鉄剤を飲むなど早めに治療が必要なケースもあります。

貧血の症状がある、産後の悪露(おろ)の量が気になる、月経量が多いときなど、異常を感じるときは医療機関を受診しましょう。

参考:

貧血になるには理由(わけ)がある 大同生命厚生事業団

(2020年4月2日閲覧)

・厚労省「日本人の食事摂取基準2020年版

(2020年4月2日閲覧)

・e-ヘルスネット「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう

(2020年4月2日閲覧)

・e-ヘルスネット「若い女性のやせや無理なダイエットが引き起こす栄養問題

(2020年4月2日閲覧)

・公益社団法人 日本産科婦人科学会・公益社団法人 日本産婦人科医会(編集・監修)

「産婦人科診療ガイドライン 産科編2020 」

写真提供:ゲッティイメージズ

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