トモニテ
 少子化対策、うまくいっている国・うまくいっていない国

少子化対策、うまくいっている国・うまくいっていない国

日本では少子化が進み、今後どんどん人口が減っていくことが予想されています。 ほかの国はどのような状況なのでしょうか。海外にも目を向け、少子化対策がうまくいっている国とそうでない国の比較を詳しく見てみましょう。
日本では少子化が進み、今後どんどん人口が減っていくことが予想されています。 ほかの国はどのような状況なのでしょうか。海外にも目を向け、少子化対策がうまくいっている国とそうでない国の比較を詳しく見てみましょう。

世界と比較して年少人口割合が小さい日本

日本の少子高齢化が進んでいます。15~64歳の労働力となるような年齢の人口(生産年齢人口)は、2019年には総人口の約6割ですが、2065年には5割ほどになると予想されています。

2019年の日本の総人口は1億2,617万人です。そのうち0~14歳の年少人口は1,521万人で、総人口に占める割合は12.1%となっています。

年齢別割合

© every, Inc.

出典:「令和2年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)」(内閣府)

世界全域での年少人口の割合(国連推計)は、26.2%で、日本の年少人口割合は世界的に見ても小さいといえます。

日本以外で年少人口の減少が進んでいる国は下記のとおりです。

少子化対策うまくいってる国うまくいってない国2

© every, Inc.

出典:「令和2年度 少子化社会対策白書」(内閣府)のデータを基に作成

これらの国では1人の女性が生涯に産む子どもの数(合計特殊出生率)が低下しており、諸外国と比較したときに、年少人口割合が小さくなっているという現状があります。

2019年の日本の合計特殊出生率は1.36です(※1)。人口の増減は、出生と死亡のバランスによって決まります。現在の日本の死亡率から計算すると、人口が減りも増えもしなくなる出生率(人口置換水準)は2.07となり、それを下回っています。

日本の人口は約30年後の2053年には1億人を割り、2065年には8,800万人になる、というのが国立社会保障・人口問題研究所の推計です(※2)。

つまり、このままでは人口が減り続けることになるでしょう。

諸外国はどうなっている?

いくつかの国や地域について、合計特殊出生率の推移を見てみましょう。

少子化対策うまくいってる国うまくいってない国3

© every, Inc.

出典:「少子化社会対策白書」「第2節 欧米諸国の出生の動向」(内閣府)のデータを基に作成

1970年にはこれら4つの国と地域の合計特殊出生率は、日本よりも高くなっていました。しかし、2000年頃までに急激に低下し、2018年には人口置換水準を下回っています。つまり、これらの国々でも人口の減少が予想されます。

アジアは世界の中でも急激に経済が発展している地域です。女性の就業率が高まり、未婚率が増加しています。その原因の一つに、文化の影響でアジアの夫婦は性別役割分業の傾向が強く、女性は結婚後に仕事の有無にかかわらず家事育児の多くを求められることがあげられます。

また、アジアにおける婚姻届を出していない男女に生まれた子ども(婚外子)の割合はわずか数%ですが、ヨーロッパ諸国での婚外出産の割合は2割から6割強です。

婚外出産の少なさも、アジアの出生率を低下させている要因の一つであると指摘されています。

少子化対策がうまくいっている国は?

欧米各国でも1960年代までは2.0以上あった合計特殊出生率が、1970年から1980年頃にかけて低下傾向になり、1人の女性が生涯に産む子どもの数が減少しました(※3)。

その背景には、子どもを養育するコストの増大、避妊の普及、結婚・出産に対する価値観の変化などがあったといわれています。

しかし、少子化対策が功を奏し、1990年頃から出生率が回復した国もあります。それが、フランスやスウェーデンです。

フランス

フランスはさまざまな少子化対策の施策によって、1993年に1.66 だった合計特殊出生率が2010年には2.02 まで回復しました。2019年は1.87となりますが、EU内では最も高い出生率です(※4)。

まず、注目すべきは多様な保育サービスです。

フランスでは2歳以下の子どもが1人いる母親の7割が就業し、5割強はフルタイムで働いています。3歳児未満人口のうち、集団保育所利用が15%、認定保育ママに代表される在宅での保育サービスの利用が3割弱です(※5)。

一時保育も充実していて、仕事の有無に関係なく利用できます。3歳以降の子どもには幼稚園、就学後は学童保育が利用可能です。

そして家族向けの公的支出も充実しており、国からもらえるお金(GDP比)は日本の3倍に達しています。最初の給付は出産手当で日本円で約11万円(約900ユーロ)、育休中の所得補償が日本円で約56万円(4400ユーロ)です(※6)。

そのほか、基礎手当や家族手当(子どもが2人以上の家庭が対象)、託児手当、子どもの数が多いほど所得税負担が軽減される税制など、手厚い支援があります。

フランスでは約6割(※7)が結婚していないカップルの子どもですが、婚姻届を出している男女に生まれた子ども(婚内子)と婚姻届を出していない男女に生まれた子ども(婚外子)は法律的に全く同じ権利を持っています。

※1ユーロ129円(2021年3月3日現在)で換算

スウェーデン

スウェーデンでは1980年代頃から少子化対策に取り組んでおり、大きな成果が得られています。1978年に1.60まで下がった合計特殊出生率は、1989~93年に2.0以上に回復し、その後上下しながら2006年以降は1.85以上を維持しています(※8)。

少子化対策の施策としては、1988年に婚外子に婚内子と全く同様の権利が保障されており、2014年には婚外子の割合が約5割となっています(※9)。

育児期間中の所得保障にも注目です。

両親合わせて最大16ヶ月)とれる育休の間、はじめの13ヶ月間は働いていたときの8割、残りの3ヶ月間は1日あたり約900円の給付があります(※10)。

父親の育児参加を促すため、2008年には両親が育児休業を平等に半分ずつ取得することを促進する、税の優遇措置も打ち出されました。これにより男女の育休取得率はともに8割を超えています。

そのほか、2年半以内に次の出産があると優遇される制度(スピードプレミアム)の導入も少子化対策に有効でした。

2人目の育休期間中に、その前の出産前に得ていた所得の8割が保障され、児童手当は16歳未満児まで延長され子どもが多くなるほど割り増しされるなど、多様で柔軟な出産・育児支援と経済支援が出生率の回復をもたらしています(※11)。

_______

フランスやスウェーデンの例から、働きながら子どもを産んで育てていくために大切なことが見えてきました。保育環境の整備や、手厚い経済的支援、子どもがいると優遇される税制などが重要だということです。

また、家族のあり方に対する考え方や制度を変えることも、子どもを育てやすい社会にするためには必要なのかもしれません。



出典:

※1:「第5表 母の年齢(5歳階級)・ 出生順位別にみた合計特殊出生率(内訳)」(厚生労働省)

※2:「令和2年度 少子化社会対策白書」(内閣府)

※3:「令和2年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)」(内閣府)

※4:「令和2年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)フランスにおける少子化対策」(内閣府)

※5、6:「8賞 特別リポート 少子高齢化の回避、『フランス』手本でも30年」(日本経済研究センター)

※7:「参考資料3 2020年4月内閣府政策統括官(経済社会システム担当)」(内閣府)

※8、10、11:「諸外国における少子化対策―スウェーデン・フランス等の制度と好事例から学ぶ」(日本衛生学会)

※9:「参考資料3 2020年4月内閣府政策統括官(経済社会システム担当)」(内閣府)

写真提供:ゲッティイメージズ

※当ページクレジット情報のない写真該当