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計画分娩はどんな時に?

【産婦人科医監修】計画分娩とは?どんな時に行うの?

分娩には出産する日をあらかじめ決める「計画分娩」という方法があります。
ママと赤ちゃんを守るために行い、慎重に行うべき分娩方法のひとつです。
具体的にはどんなとき、どんな方法で行っているの?計画分娩の方法や、リスクなど気になる内容をお伝えします。

分娩には出産する日をあらかじめ決める「計画分娩」という方法があります。
ママと赤ちゃんを守るために行い、慎重に行うべき分娩方法のひとつです。
具体的にはどんなとき、どんな方法で行っているの?計画分娩の方法や、リスクなど気になる内容をお伝えします。

計画分娩って?

計画分娩は「誘発分娩」といわれており、ママやお腹の赤ちゃんのために、自然な陣痛を待たずに出産する必要があるときや、無痛分娩を希望するママに対して行われます。

あらかじめ日にちを決めて人工的に分娩を誘発させます。行うかどうかの判断や日にちは医師が慎重に決めています。

出産日をあらかじめ決めるという意味では、「予定帝王切開」も同じです。しかし帝王切開を行うのは、事前の検査で経膣分娩が適さないと判断された場合です。

たとえば、胎盤が子宮の出口を塞いでいる(前置胎盤)のケースなどがあります。

今回は経膣分娩を誘発する、計画分娩(誘発分娩)をご説明しています。

予定の帝王切開については、以下の記事も参考にしてください。

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計画分娩を行うのはどんなママ?

「医学的な理由から行う場合」と「社会的な理由から行う場合」があります。

医学的な理由で計画分娩を行う場合

妊娠を続けることがママとお腹の赤ちゃんにとってリスクとなる場合です。

ママ側の理由としては、妊娠高血圧症候群など妊娠がママの体に負担となっていて、早めに妊娠を終わらせたほうがよい場合、陣痛が来る前に破水してしまった場合(前期破水)などが例としてあげられます。

お腹の赤ちゃんの側の理由としては、赤ちゃんの疾患の治療のために早めに分娩したほうがよいとき、子宮内に何らかの感染があるとき、妊娠週数42週0日以降の妊娠(過期妊娠)、胎児の発育不全や、巨大児が予想されるとき、などがあります。

社会的な理由で計画分娩を行う場合

あらかじめ決まった日時での分娩が望ましい場合です。

ママ側の理由としては、自宅から分娩する施設までが遠く、来院までに時間がかかってしまう場合。

または上のきょうだいがいるなど、夫や家族の休みをあらかじめ設定しておく必要がある場合などがあります。

分娩する施設側の理由としては、無痛分娩をするときや、生まれてくる赤ちゃんに何らかの治療が必要な場合に、対応できる医療スタッフの確保ができる日や時間が限られていること、などが挙げられます。

必要な条件を満たし、十分に説明を受けた上で行われる必要があります。そのため計画分娩を希望したママが必ず行えるというわけではありません。

無痛分娩を希望したときに計画分娩となることが多い理由は?

現在日本では無痛分娩を希望したときに「計画分娩」で行われることが少なくありません。

分娩誘発には少なからずリスクもあります。そのため自然な陣痛から痛みが強くなってきたところで、硬膜外麻酔といって、背中にカテーテルを通して脊髄の周囲に麻酔薬を入れる方法を使って分娩が行われることがベストです。

しかし実際には24時間いつでも無痛分娩に対応できる産科施設ばかりではありません。

あらかじめ分娩予定日を決めて、安全に無痛分娩を行えるようにしています。

計画分娩はいつ行うの?

時期は計画分娩を行う理由によってさまざまです。

妊娠を続けるとママとお腹の赤ちゃんのどちらかによくない影響のあるときは、早く分娩を必要とする場合があります。

また、予定日を過ぎて妊娠42週以降になると(過期妊娠)、お腹の赤ちゃんのリスクが上がってきます。

出産予定日より1週間から10日以上たっても陣痛がこない場合は誘発分娩を検討します。

社会的な理由の場合には、正期産である37週以降に行います。

これまでの妊娠経過や内診の所見から、ママの体が十分に分娩の準備ができているか、お腹の赤ちゃんがママの体の外での環境に耐えうるかなどを医師が判定した上で行います。

計画分娩の方法は?

子宮頸管(子宮の出口)を柔らかくして広げる処置を行う方法と、子宮を収縮させる薬を使う方法があります。

まず子宮頸管が十分に柔らかくなっていないと分娩がうまく行きません。柔らかくなっていない場合には、まず子宮頸管を柔らかくする処置を行ってから、子宮を収縮させる薬を使うことがあります。

分娩監視装置(※)を使って赤ちゃんの心拍とママの子宮の収縮具合を観察しながら、慎重に進めていきます。

※分娩監視装置とは?

赤ちゃんの心拍とママの子宮収縮の状態を同時に観察し、数値をグラフ化できる装置です。

赤ちゃんが元気かどうか、陣痛の強さや陣痛が何分おきかなどがわかります。

2つのセンサーがついたベルトをママのお腹の周りに巻いて使います。

計画分娩をするメリット・デメリット

メリットはその理由により異なりますが、まず医学的には「ママとその赤ちゃんを守る」ことができることです。

また、あらかじめ専門的なスタッフがそろっているときに分娩を行うので、スタッフが慎重に見守りながら分娩を進めることができます。

何かトラブルが起きたときにもすぐ対応することが可能です。

家族にとっても予定がわかることで仕事の調整がつきやすいなど、ママの安心にもつながります。

デメリットは、自然に起きた陣痛と違って子宮頸管が十分に柔らかくなっていないことが多く、うまく陣痛が続かないケースがあることです。分娩の時間が長くなっても、赤ちゃんがなかなか出てこないこともあります(遷延分娩)。

逆に陣痛が強くなりすぎてしまうと、お腹の赤ちゃんも苦しくなってしまったりママの子宮を傷つけてしまう可能性があります。

そのため、十分に状態を観察しながら行われます。

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計画分娩(誘発分娩)についてお伝えしました。

もともと計画分娩を希望していたママも、また、急に決まったことで不安なママもいることかと思います。

しかし、ママと赤ちゃんを守ることを第一に考え、慎重に行われている分娩方法であることには変わりありません。

不安やわからないことがあれば、十分に医師と相談してみましょう。

参考:

・監修:武谷 雄二、上妻 志郎、藤井 知行、大須賀 穣

「第3版プリンシプル産科婦人科学2 産科編」株式会社メジカルビュー社(2017年)

写真提供:ゲッティイメージズ

※当ページクレジット情報のない写真該当