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【医師監修】分娩方法の種類 選ぶときのポイントは?

【医師監修】分娩方法の種類 選ぶときのポイントは?

妊娠すると、どのような分娩方法があるのか、自分にはどのような選択肢があるのか気になりますよね。
分娩方法の違いを知り、自分の希望がどのような出産施設で叶うかどうかあらかじめ余裕をもって相談しておくと安心です。
今回は分娩方法について解説します。
妊娠すると、どのような分娩方法があるのか、自分にはどのような選択肢があるのか気になりますよね。
分娩方法の違いを知り、自分の希望がどのような出産施設で叶うかどうかあらかじめ余裕をもって相談しておくと安心です。
今回は分娩方法について解説します。

分娩方法は大きく分けて2つ 経腟分娩または帝王切開

赤ちゃんを産む方法は、大きく分けて経腟分娩と帝王切開による分娩の2つです。

経腟分娩では、赤ちゃんがママの骨盤の中の産道を通り、腟から出てきます。

帝王切開による分娩では 赤ちゃんは骨盤内の産道を通ることなく、ママの下腹と子宮の下のほうを切開して生まれてきます。

経腟分娩

自然分娩

おしるし、陣痛や破水など、自然に分娩のきっかけが来るのを待ち、そのまま自然の流れに任せて分娩が進行します。最終的には2、3分おきにやってくる陣痛に合わせ、自分の力でいきんで赤ちゃんを腟から産みます。

ママの持つ産む力を最大限発揮できるよう、助産所などでは助産師さんから妊娠中に生活指導を受け、出産時の心構えや陣痛の乗り切り方、呼吸法、体力作りなどに取り組みます。

ただし、リスクが少ないと考えられていたママの出産時に、母子の容態が急変することもありえます。自然に始まったお産でも、途中で医療介入の必要が出てくる可能性があることは覚えておきましょう。

計画分娩(分娩誘発)

妊婦さんの中には分娩開始を自然に任せて待っていられない、または待っていないほうがよいときがあります。

たとえば、母体側の理由としては妊娠合併症が発症し、このままだと重症となり、母児が危険と判断される場合や、予定日超過などが挙げられます。

胎児側の理由としては胎児発育不全、巨大児などがあります。

社会的な理由としては、パートナーの立ち合いを希望する、無痛分娩が安全に行える時間帯の分娩管理を希望する場合などです。

母体や胎児の医療的な理由や、社会的な理由があるときに分娩を計画して誘発して分娩を開始させるのが計画分娩(分娩誘発)です。

計画分娩では、腟用薬剤や頸管拡張法により子宮頸管の熟化を促したうえで、子宮収縮剤を使用して陣痛が来るようにします。

無痛分娩

陣痛時に鎮痛目的で麻酔(主に硬膜外麻酔)を使用する分娩のことを言います。

硬膜外麻酔は、細いチューブを背骨の中の硬膜外腔に挿入し、麻酔薬を注入して下半身の鎮痛を得る方法です。局所麻酔なので、ママの意識はあり、いきんで赤ちゃんを産む感覚や、赤ちゃんが生まれる瞬間もわかります。この麻酔方法は帝王切開のときに使われることもあります。

麻酔を開始するタイミングや麻酔の使用量は、本人のお産の進みがスムーズであるかどうかにより、かなりの差があります。また、本人の痛みの自覚にも違いがみられます。

「無痛希望なのに無痛じゃなかった」、「無痛でなくて和痛程度だった」、逆に「自然陣痛よりずっと楽だった」、「痛みが取れて上手にいきむことができた」など、無痛分娩を経験したママの感想はいろいろです。

産婦人科医 大柴先生のひとこと 「陣痛の痛みがない=安産」ではない!

お産は、陣痛が痛いことだけが問題ではありません。

妊娠中のママの中には、いわゆる難産を経験する人もいます。難産というのは、痛みの強さに関係なく、分娩の進行自体がスムーズに進まないことを意味します。

無痛分娩を行って痛みが取れても、出産までの過程がスムーズでなければ難産です。陣痛の痛みの有無に関係なく、母児とも困った事態に巻き込まれることもあります。

分娩方法が途中で変わる可能性も

上記いずれの分娩方法も完全に区別できるものではありません。

自然分娩でも途中から医療介入が必要になったり、計画分娩を予定していても自然分娩になったりします。

自然分娩を希望していたものの、途中から麻酔を使用することもありますし、無痛分娩を希望していても麻酔ができないままあっという間にお産が進んでしまうこともあります。逆になかなか生まれないために麻酔を減らしたり、中止することもあります。

帝王切開を避けるため、特別な手法を使うことも

どの経腟分娩においても、赤ちゃんがお母さんの腟の出口の最後のところにきてなかなか出てこないことがあります。

あと少しで生まれる!というときに、赤ちゃんの頭を専用の道具を用いて引っ張ったり(吸引・鉗子分娩)、赤ちゃんのお尻をお母さんのお腹の上から押して(子宮底圧迫法)、赤ちゃんが出やすいように助けたりすることがあります。

なるべくお腹を切る帝王切開にならないように、ママと赤ちゃんを助けて経腟分娩を行う産科手法があることも覚えておきましょう。

帝王切開分娩

帝王切開とは、ママの下腹と子宮を切って胎児を取り出す手術のことです。

一般的には胎児が産道を通れない、または通ることにより母子にリスクが生じるため、経腟分娩ができないときに選択されます。

たとえば、赤ちゃんの頭が下になっていない骨盤位(いわゆる逆子)や横位、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、児頭骨盤不適合、母体合併症や胎児胎盤機能不全、子宮破裂の恐れが懸念されるなどの場合です。

日本でも近年帝王切開による分娩は増えていますが、帝王切開は手術であり、その弊害がないものではありません。出血が多くなったり、感染症など術後合併症を起こす可能性があります。また次回の妊娠で癒着胎盤や胎盤付着部の異常(前置胎盤など)が起きやすい可能性があります。

赤ちゃんにとっては産道の中を通るストレスがなく、経腟分娩と比べて短時間で生まれてくるので、低酸素血症などの経腟分娩時のトラブルは避けられます。生まれてすぐに医療が必要な赤ちゃんにおいては帝王切開による分娩が安心でしょう。

分娩は安全第一 方法は状況に応じて対応を

通っている分娩施設で、希望する分娩方法に対応できないケースもあります。

その際には対応可能な施設に移動するか、その施設が提供する方法に変更して分娩するのか検討しなくてはなりません。

診療所やクリニック、助産所など、入院病床の少ない施設では受け入れる人数を制限したり、時期を限ったりしていることがあるので、余裕を持って早めに分娩方法を考えるのがおすすめです。

ただし、妊娠が進むうちに自分の希望が変わったり、問題が起きて分娩方法を変更せざるを得なくなることもあります。

出産で第一に優先すべきことは、ママと赤ちゃんの安全です。もし変更の必要があった場合にも、赤ちゃんを無事に迎えることができるよう準備をしていきましょう。

産婦人科医 大柴先生のひとこと

無痛分娩を提供している分娩施設の情報は、無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA:Japan Association of Labor Analgesia )のホームページをチェックしてみましょう。

なお、予定の帝王切開を行う場合は、産院・病院での出産になります。

自宅出産希望であれば、助産院に相談しましょう。

水中出産などをしているかどうかは各施設に個別に問い合わせる必要があるでしょう。

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出産は新しい家族を迎えるための通過点の一つであり、女性にとってもそのパートナー、家族にとっても貴重な体験となります。

出産について、ぜひたくさんのイメージを膨らませてください。

ママのアイデンティティ、パートナーや家族の希望、社会文化的背景やママや赤ちゃんの安全などを考慮しつつ、医療スタッフも含めたみんなで一緒に考えて赤ちゃんを迎えたいですね。

参考:

写真提供:ゲッティイメージズ

※当ページクレジット情報のない写真該当