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妊娠後期 腹痛

注意が必要な妊娠後期のお腹の張りや腹痛は?【医師監修】

妊娠後期はお腹の張りや、手や足のむくみなどのマイナートラブルも気になる時期です。軽いお腹の張りは心配のないことがほとんどといわれていますが、おさまらなかったり、痛みが出たりする場合には速やかに受診する必要があります。
妊娠後期はお腹の張りや、手や足のむくみなどのマイナートラブルも気になる時期です。軽いお腹の張りは心配のないことがほとんどといわれていますが、おさまらなかったり、痛みが出たりする場合には速やかに受診する必要があります。

妊娠後期っていつから?

妊娠後期は妊娠8〜10ヶ月をさします。

週数でいうと28週以降にあたります。

妊娠後期のママの体

月別の妊娠後期に起こりやすい症状

8ヶ月のママの体の特徴は? (28〜31週)

個人差がありますが、ますます胎動を感じ、中には赤ちゃんの活発な胎動で夜中に目が覚めるママも。

貧血にもなりやすくなります。またお腹がぐっと大きくなりはじめ、妊娠線ができることもあります。

また、体重が増えやすい時期です。増えすぎ、減りすぎ、どちらもよくありませんが、増え過ぎてしまった場合には、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった合併症を起こしやすく注意が必要です。

妊娠高血圧症候群

妊娠中に高血圧になる状態で、尿たんぱく※を伴うこともあります。

母体への負担も大きく、胎盤の機能が低下するために、早産にあたる時期であっても母体や赤ちゃんの救命を目的に分娩を誘導したり、帝王切開を行うことがあります。

赤ちゃんは妊娠週数に比較してしばしば発育不良の状態になります。

初期には自覚症状がないため、健診で血圧をチェックすることが大切です。

ふだんから、塩分を少なめにしたり、カロリーの取りすぎに注意し、適度な運動も必要です。

※尿たんぱく…尿へたんぱくがもれ出ていることをいいます。妊婦健診の尿検査で尿糖とともにチェックします。尿たんぱくが陽性の場合は腎臓の機能が低下している可能性が考えられます。

妊娠糖尿病

妊娠中に初めて見つかった血糖値の異常(糖の代謝異常)で、明らかな糖尿病でないものをいいます。

妊娠すると、ママの体はお腹の赤ちゃんに優先的にブドウ糖を送るような仕組みに変化します。その結果ママの体の糖代謝が変化し、妊娠中は誰でも血糖値が下がりにくくなります。

血糖値が高い状態が続くと、胎盤を通じてブドウ糖が赤ちゃんに移行し赤ちゃんの膵臓から大量のインスリンが分泌されます。インスリンは成長因子の1つで、その作用により赤ちゃんが大きくなりすぎたり、羊水が増えすぎたりして、早産や難産になりやすくなります。

医師などの指導のもと、食事療法、運動療法を行い、ときにインスリン注射で血糖のコントロールを行うこともあります。

9ヶ月のママの体の特徴は? (32〜35週)

より子宮が大きくなり、胃や心臓、肺など、周囲の臓器が圧迫されます。そのため個人差はありますが、胸やけや胃もたれ、動悸や息切れを感じたり、尿もれや、尿が近くなることも。

人によっては、赤ちゃんの頭が産道を作る骨盤入口に近づき、恥骨や足の付け根に痛みを感じる場合もあります。

10ヶ月のママの体の特徴は? (36〜39週)

いよいよお産に近づきます。個人差はありますが、赤ちゃんが以前よりも骨盤入口に下がるため、胃もたれが解消されてきます。

しかしそのぶん膀胱や直腸が圧迫されるため、尿が近くなったり、便秘がひどくなったりすることも。

妊娠後期にお腹の張りが起こる理由

便秘やお腹の冷え、長時間歩く、立ちっぱなし、乳首への刺激や、性行為など、妊娠後期に起こるお腹の張りはそれなりに多く、安静にして落ち着くようであれば心配はありません。

休んでも落ち着かなかったり、張りが周期的に起こる場合には、早産になりそうなど、何らかの異常の可能性があります。速やかに医師の診察を受けることが大切です。

以下の動画も参考にしてください。

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妊娠後期のお腹の張りや腹痛、注意が必要な場合は?

張りや腹痛を我慢しすぎてしまうと赤ちゃんやママ自身に危険が及ぶこともあります。無理をせず、速やかに医療機関に相談し、受診しましょう。

妊娠後期の腹痛で考えられる、注意が必要なケースをいくつかご紹介します。

常位胎盤早期剥離

赤ちゃんが生まれた後に剥がれるはずの胎盤が、何らかの理由により赤ちゃんが生まれる前にはがれてしまうこと。ママもお腹の赤ちゃんにも危険が及ぶので、一刻も早い処置が必要となります。

代表的な症状はお腹の強い張り、腹痛、かなりの激痛のこともあります。胎盤が剥がれて子宮内へ出血するため、初期は性器からの出血はほとんどなかったり、少量のこともあります。胎動の減少は重要なサインです。いつもと違う症状で判断しにくいときには、医療機関へ相談、受診しましょう。

公益財団法人 日本医療機能評価機構 「妊産婦のみなさまへ 常位胎盤早期剥離って何?」 (2020年4月8日閲覧)

早産

赤ちゃんが妊娠22〜37週未満で生まれてしまうこと。

主な原因は子宮内の感染です。お腹が規則的に張ったり、出血がみられるようならすぐに受診しましょう。

子宮筋腫の痛み

子宮筋腫がある場合、妊娠中に子宮筋腫は大きくなります。

またお腹の赤ちゃんのために、胎盤に血流が行く分、筋腫への血液の流れが悪くなり、しばしば痛みが生じます。

筋腫の部分に炎症が起きたり、痛みが強い場合には切迫早産になる可能性もあり、安静や投薬治療、入院治療が必要となることがあります。

子宮の傷や、壁が薄くなっている

以前帝王切開で出産したり、子宮筋腫の手術を受けていて子宮に傷がある場合や、出産回数の多いママなどは、これらが子宮破裂の原因となることがあります。多くは陣痛開始後に起こるとされていますが、妊娠中に起こるケースも稀にあります。

子宮破裂が生じた場合、速やかに赤ちゃんを子宮から取り出さないと、赤ちゃんに生命の危機が迫り、あるいは脳に後障害をおこすこともあります。できる限り早く、帝王切開で赤ちゃんを出産させ、ママの出血を止める必要があります。ママも大出血のため、輸血や子宮摘出となる場合がほとんどです。

妊婦健診でしっかり定期的な診察を受け、腹痛や出血がある場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

前置胎盤

胎盤が子宮の出口をふさぐような位置に付着している状態です。

出血が起こりやすいため、安静が第一。

ママとお腹の赤ちゃんの安全のため、帝王切開術での出産となります。

無痛性出血と呼ばれる腹痛のない出血がみられやすいとされていますが、できる限り予定日近くまで出血させないように安静にして過ごすことが大切です。予定した帝王切開日より前に出血がみられ、入院安静をしていても出血が収まらない場合や、陣痛、破水が起こった場合には緊急の対応が必要。普通の帝王切開よりも出血が多くなりやすいので、妊娠中から貧血にならないように注意し、自己血を貯血して出産を迎えるなどの対応が一般的です。

前置胎盤を指摘されているママは、お腹が張ること自体が出血を起こしやすいので、異常を感じたら必ず医師に相談しましょう。

産婦人科医・安達先生からのメッセージ 妊娠後期を迎えるママへ

お母さんが行動するときにはいつもおなかの赤ちゃんと一緒に行動していたわけです。妊娠中はお腹が大きく大変だな、と思っていらっしゃると思います。しかし、終わってしまうといつも一緒にいたとても貴重な時期だったと感じるのではないでしょうか。この時期をできる限り楽しんでもらいたいですね。

実際、出産してみると、お腹の中にいる時の方が楽だったなんていうこともあります。それくらい、子どもを育てるのは大変なことですね。

また、色々な状況で難産になると予想される場合、油断しないで準備しているととても安全で安心なお産ができるものです。一方、難産と思っていた出産が、ことわざ通り「案ずるより産むがやすし」の場合もあります。本当に人それぞれで同じものはありません。

妊娠、出産にはリスクがあることを知って、お腹の赤ちゃんとお母さん自身を大切にしていきましょう。

_______

今回は妊娠後期のお腹の張りや腹痛についてお伝えしました。

お腹の張りを感じた場合、まずは安静にして休んでみましょう。

また普段からの定期的な妊婦健診で異常がないか確認しておくことも大切です。休んでも落ち着かない場合や、痛みや出血がある場合、いつもと何か違うような違和感があるときは我慢せず医療機関に相談しましょう。

参考:

  • 安達知子(監修)、「はじめてママ&パパの妊娠・出産」、主婦の友社、2018年 
  • 武谷雄二・上妻志郎・藤井知行・大須賀穰(監修)、「第3版プリンシプル産科婦人科学②産科編」、メジカルビュー社、2017年
  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会・公益社団法人 日本産婦人科医会、「産婦人科診療ガイドラインー産科編2017」、2017年(2020年4月3日閲覧)

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写真提供:ゲッティイメージズ

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