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羊水過多

【医師監修】羊水過多とは?原因や治療について

妊娠後期の羊水はおもに赤ちゃんが飲み込み、吸収することで一定の量に保たれています。ところがまれに、羊水の量が多くなりすぎたり、少なすぎたりすることがあります。今回は羊水の量が通常より多くなる羊水過多についてお伝えします。
妊娠後期の羊水はおもに赤ちゃんが飲み込み、吸収することで一定の量に保たれています。ところがまれに、羊水の量が多くなりすぎたり、少なすぎたりすることがあります。今回は羊水の量が通常より多くなる羊水過多についてお伝えします。

羊水のはじまり

妊娠初期の羊水は羊膜(赤ちゃんを包む膜)と、妊娠中のママの血液から作られていると考えられています。

妊娠の中期以降になると、大部分は赤ちゃんが排出した尿になります。

羊水過多とは?

羊水の量は個人差が大きく、時期によってもその量は変わります。

妊娠週数が進むにつれて量が増え、妊娠30週前後でピークとなりますが、出産が近くなると少し減ります。

妊娠の時期を問わずに、羊水の量が800mlをこえる場合、羊水過多となります。

羊水過多の原因は?

羊水過多の約60%は原因がわからないといわれています。

残りの割合はさまざまな原因で構成されていますが、お腹の赤ちゃんが羊水を飲む量が減ること、または羊水をおしっことして出す量が増えることに大きく分けられます。

赤ちゃんが吸収する羊水量が減る原因は?

まずお腹の赤ちゃんの消化管の異常が挙げられます。

食道、十二指腸、小腸の一部である空腸(くうちょう)などが閉鎖していたり、横隔膜ヘルニアなどの場合、羊水を飲みこんでも下まで流れていきません。閉鎖している手前の部分に羊水が溜まり、その部分の消化管が広がってしまいます。消化管の異常の場合、ほかに心臓の異常や染色体の異常も合併しているケースもあります。

また、お腹の赤ちゃんが染色体の異常や、筋肉、神経系に障害があった場合はうまく羊水を飲み込むことができず、吸収する量が減り羊水過多となります。

羊水をおしっことして出す量が増える原因は?

多胎妊娠、とくに一卵性双生児では双胎間輸血症候群(そうたいかんゆけつしょうこうぐん)となった場合、お腹の2人の赤ちゃんが、一つの胎盤から受け取る血液と酸素の量のバランスが崩れてしまいます。受血児(血液を多くもらっているほうのお腹の赤ちゃん)の方は受け取る血液の量が多いので羊水量が増えます。血流が多いぶん、心臓などにも負担がかかります。

また、ママが妊娠糖尿病になると、お腹の赤ちゃんも高血糖になります。その影響から、おしっこが増えて羊水量が増えることがあります。

そのほか血液型不適合妊娠や、パルボウイルス感染(りんご病)などによる胎児貧血が原因となることがあります。

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羊水過多の診断は?どうやってわかるの?

現在、羊水の量を直接測定する検査はほとんど行われていません。

羊水の量は、経腹超音波(お腹のエコー)検査で評価します。

評価の方法には、羊水ポケット法と、羊水インデックス法があります。

羊水ポケット法(AFP)とは?

超音波プローブという機械をママのお腹にあて胎内を画像で映し出し、子宮のなかでお腹の赤ちゃんやへその緒(臍帯)を含まない部分に円を描きます。一番大きな円が描けるところを選ぶイメージです。

その円の一番大きな直径が8cm以上が羊水過多、2cm以下が羊水過少と診断されます。

羊水インデックス法(AFI)とは?

ママのお腹(子宮)のエコー画像を上下左右に4つに分けて、それぞれお腹の赤ちゃんやへその緒を含まない一番深い場所を測ります。

4つの深さをすべてを足して24〜25cm以上が羊水過多、5cm以下が羊水過少と診断されます。

羊水過多の治療

原因により治療方法は異なります。

ママの妊娠糖尿病が原因の場合は、血糖をコントロールする治療をします。

胎児貧血の場合は胎児へ輸血をするなど、治療が可能である場合は行います。

そのほか羊水過多では前期破水(※)や早産となりやすいので、入院し安静にして妊娠を続けられるようにします。

羊水が増えすぎてしまうと、ママは肺や心臓、胃などが圧迫されます。そのため息苦しさ、動悸、吐き気、尿が近くなったり、逆に出にくくなったりすることがあります。これらの症状が強いときには、羊水を抜く治療をします。急に大量の羊水を抜いてしまうと、早期に陣痛が来たり、まれに常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)を起こしたりすることがあるので少しずつ慎重に行われます。

1,500〜2,000mlほど抜くと症状が改善されますが、また数日すると羊水は増えてくるので、必要に応じて処置を繰り返します。

※前期破水:陣痛が来る前に破水してしまうこと。

羊水過多の影響は?

微弱陣痛

分娩のときには子宮の収縮(陣痛)が強すぎても弱すぎてもスムーズに進みません。

羊水が多く子宮が普通より伸びきったことにより、陣痛が弱くなり(微弱陣痛)、分娩が長引いてしまうことがあります。

胎位や臍帯(へその緒)の異常

羊水過多の場合、通常よりお腹の赤ちゃんが動き回れる空間があります。そのため、お腹の赤ちゃんに逆子(骨盤位)など、胎位の異常が起こりやすくなります。

へその緒がお腹の赤ちゃんのお尻の下にある(臍帯下垂)と、破水したときにへその緒が先に出てしまい(臍帯脱出)、赤ちゃんへの血流が止まり酸素がいかなくなってしまう可能性がある場合には、緊急帝王切開を行います。

弛緩(しかん)出血

分娩後は、羊水が多いぶん子宮が大きく伸びたことにより、本来なら子宮が収縮がして止まるはずの出血が止まらずに続いてしまうことがあります。これを弛緩出血といいます。

この場合、子宮収縮薬を使用して出血を止める治療をします。

羊水過多のママができることは?

羊水過多の原因ははっきりしないことが多いのですが、お腹の赤ちゃんに何らかの異常があるとわかっているケースでは、出生後には外科的な治療が必要なことがあります。赤ちゃんを詳しく検査する必要があるため、NICUなどのある周産期センターでの分娩がすすめられています。

また早産の可能性や、分娩時のトラブルが予測されることがあるため、医師の指示のもと定期的な診察を欠かさないようにしましょう。不安やわからないことなどがあれば一人で抱え込まずに医師や助産師に相談しましょう。

参考:

  • 武谷雄二・上妻志郎・藤井知行・大須賀穰(監修)、「第3版プリンシプル産科婦人科学②産科編」、メジカルビュー社、2017年
  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会・公益社団法人 日本産婦人科医会、「産婦人科診療ガイドラインー産科編2017 」、2017年

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写真提供:ゲッティイメージズ

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