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【医師監修】妊娠後期の出血。原因は?

【医師監修】妊娠後期の出血。原因は?

妊娠後期に起こるトラブルのうち、気をつけておきたいものの一つが性器からの出血です。この記事では、どのような原因で出血するのか、出血したらどうしたらよいのかについてお伝えします。
妊娠後期に起こるトラブルのうち、気をつけておきたいものの一つが性器からの出血です。この記事では、どのような原因で出血するのか、出血したらどうしたらよいのかについてお伝えします。

妊娠後期はいつからか

妊娠8ヶ月〜10ヶ月(28週0日〜分娩まで)を妊娠後期と呼びます。

妊娠8~9ヶ月は、子宮が日に日に大きくなって、ママの胃や心臓を押し上げ膀胱(ぼうこう)などを圧迫してくるため、個人差はありますが、息苦しさや動悸・食べ物のつかえ・頻尿・便秘などに悩まされることがあります。出産が近くなると赤ちゃんの位置が下がるため、息苦しさや圧迫感がは少なくなってくる感じがわかる人がいます。

活発に赤ちゃんが動くのでおなかのあちこちが盛り上がって引き延ばされたり、時にはキックを受けたりして、「いたた……」とびっくりすることもあるでしょう。出産に向かう体の変化の一つには前駆陣痛(ぜんくじんつう)と呼ばれるおなかの張りが出てくることもあります。妊娠9ヶ月(35週)までは妊婦健診が2週間に1回、妊娠10ヶ月(36週)以降には週に1度になりますが、おなかが張った状態が続いたり、痛みや出血をともなっている場合には、健診を待たずに受診しましょう。

妊娠後期はいつからかについて、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

妊娠後期に起こる出血の種類や原因は?

性器からの出血があれば、量や状態をよく観察しましょう。

妊娠後期には、出産に備えて子宮口や膣がやわらかくなっています。そのため、内診や性行為などによって出血する場合があります。

また、おりものに少量の血液が混じっている場合には、出産が始まるサインの「おしるし」かもしれません。

もし、流れるような大量の血液や血の塊が出る、あるいは痛みをともなう場合は、すぐに病院に連絡しましょう。主な原因として、以下の3つの可能性が考えられます。

前置胎盤(ぜんちたいばん)

胎盤が子宮の出口に近い位置にでき、子宮口の一部または全部を覆っている状態が「前置胎盤」です。通常の分娩では、子宮から赤ちゃんが出てきたあとに胎盤が出ますが、前置胎盤では胎盤が赤ちゃんの出口をふさいでいて、子宮口が開く際に、大出血を起こしてしまいます。そのため、前置胎盤の分娩は必ず帝王切開となります。

遅くても妊娠28週ごろまでには超音波検査で前置胎盤かどうかが判断されますので、前置胎盤と診断されたりその疑いがある場合は出血やおなかの張りに注意し、長時間の外出や旅行などを控えましょう。

特に、妊娠28週以降になるとおなかが大きくなって張りやすくなり、突然出血することがあります。出血の量によっては妊娠の継続が危ぶまれ、やむを得ず帝王切開で早産になることもあります。ママも赤ちゃんも大変危険ですので、すぐに病院に連絡しましょう。

前置胎盤について、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

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胎盤が子宮底でなく子宮口付近に認められます。出血に注意。

常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)

「常位胎盤早期剥離」とは、胎盤の位置に異常はない(正常な位置にある)にもかかわらず、胎児の娩出よりも前に胎盤の一部または全部が子宮壁からはがれ、出血してしまう状態です。多量の出血が続く場合もあれば少量のこともあり、下腹痛がある場合とない場合があります。

前置胎盤は位置の異常によるものでしたが、胎盤早期剥離は剥離の時期の異常によるものです。どちらも胎盤のトラブルが原因となり、出血が起こります。

通常の分娩では胎盤がはがれた部分からの出血は子宮の収縮にともなって止まりますが、胎盤が分娩前に剥離した場合には子宮が縮まらず出血が止まらないため、大量に出血します。胎盤のはがれた位置や面積によっては、一刻も早い緊急帝王切開が必要になります。

出血やおなかの張りや痛みがあり胎動が少ない場合にはすぐに病院に連絡することが大切です。病院と連絡を取りながら、必要に応じて救急車を要請することもあります。

常位胎盤早期剝離は、妊娠高血圧症候群や絨毛膜羊膜炎(赤ちゃんを包む卵膜が細菌感染した状態)、前期破水などで発症しやすいほか、腹部への打撲で発症する場合があります。子宮に圧力がかかるようなことがあった場合、母体のほうの症状はかるくても、胎盤早期剥離を発症することがありますので、車に追突されたなどの交通事故や階段から落ちた、転んでおなかを打ったなどの場合には、病院を受診することが大切です。

常位胎盤早期剥離について、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

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母子ともに危険度が高いので、早く受診することが大切。

早産・切迫早産

妊娠22週以降37週未満の出産を「早産」といい、早産となる危険性が高い状態を「切迫早産」といいます。おなかの張りや痛みが規則的かつ何度も起こり、破水や出血をともなう場合には入院が必要です。

早産は全妊娠の約5%(※1)ほどですが、次に当てはまる人はリスクが高くなるので注意してください。

  • 過去の妊娠で早産を経験している人
  • 多胎妊娠や前置胎盤
  • 子宮疾患や高血圧症などの既往歴のある人
  • 喫煙やアルコールの生活習慣のある人

できるだけ早産にならないように定期的な健診を受けること、異常な出血やおなかの張りに気づいたら早めに医師に相談することが重要です。

早産・切迫早産について、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

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おなかの張り、出血など症状があればすぐ受診を。
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早産で生まれた赤ちゃんは、生きていくための機能が未熟なことが多いといわれています。赤ちゃんの健康を考えると早産を不安に思うママも多いでしょう。ここでは、早産や切迫早産の原因となる習慣や予防方法、治療内容について解説します。

※1
公益社団法人 日本産科婦人科学会「産科・婦人科の病気早産・切迫早産」より

妊娠後期の出血について、先生からの一言

いよいよ妊娠も終わりのころになり、体も重くなり、また来るべき出産のことを考えてなんとなく不安になられているのではないでしょうか。とくに初産の方は、調べれば調べるほど、聞けば聞くほど心配が増えてしまうかもしれません。

妊娠後期だけに限らず、お子さんが生まれたあとに出てきた疑問や育児にまつわる情報など、様々な情報を上手に取り入れて役立てていく時代になりましたね。

パートナーや信頼できる家族とよく話し合いながら、自分の不安な気持ちに冷静に、そして上手に対処していきましょう。医療機関のわれわれもお手伝いできればと思っています。

妊娠後期、ほかのトラブルもチェック

そのほか、妊娠後期に気をつけておきたいトラブルには、以下のものなどがあります。

妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)

妊娠時に高血圧を発症するもので、妊婦の20人に1人の割合で起こります。高血圧やタンパク尿、肝機能や腎機能障害などのほか、赤ちゃんの推定体重が週数に比べて少なかったり、順調に増加していかなかったり、常位胎盤早期剥離など重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

前期破水

陣痛が始まる前に破水が起こることを前期破水といいます。子宮内への感染が問題となりますので、破水が疑われるときはお風呂に入らず、すぐ病院に連絡し受診しましょう。

妊娠の正産期に起きる場合は分娩開始の兆候と考えられますが、早産期に起きることもあります。その場合には 赤ちゃんをおなかの中でもう少し持たせることができるのか、それとも早産とはなるが娩出を考えたほうがよいのか、妊娠継続の可否(妊娠の継続ができるかどうか)について医療的な判断が必要になります。

貧血

胎児の成長に鉄分が多く使われるため、貧血になりやすいです。また来るべき出産時にはどうしてもある程度の出血が見込まれます。出産を控えたママは予備の鉄を蓄えておく必要があるでしょう。鉄分のみならず良質なたんぱく質とビタミンも摂取するようにしましょう。

_______

妊娠後期になると、赤ちゃんもママも出産の準備が整ってきます。しかし、胎動が無い、少ない、またはおなかの張りや異常な出血は赤ちゃんからのSOSのサインかもしれません。普段と違うと感じたら、すぐに医師に相談しましょう。

参考:

・医療情報科学研究所(編)、『病気がみえる vol.10 産科 第4版』、株式会社メディックメディア、2018年

・「産婦人科診療ガイドライン 産科編2020」(編集・監修 日本産婦人科学会/日本産婦人科医会) p147,p165

・武谷雄二・上妻志郎・藤井知行・大須賀穰(監修)、「第3版プリンシプル産科婦人科学②産科編」、メジカルビュー社、2017年

・「妊婦検診Q&A」(厚生労働省)、2020年11月閲覧

・「早産・切迫早産」(公益社団法人日本産婦人科学会)、2020年11月閲覧

・「妊娠高血圧症候群」(公益社団法人日本産婦人科学会)、2020年11月閲覧

・「前置胎盤」(公益社団法人日本産婦人科学会)、2020年11月閲覧

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写真提供:ゲッティイメージズ

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