小児科医・高橋孝雄先生が伝える「最高の子育て」⑤ | MAMADAYS(ママデイズ)
MAMADAYS(ママデイズ)
親子学習

小児科医・高橋孝雄先生が伝える「最高の子育て」⑤

小児科医として、また父親として多くの子どもと向き合う高橋孝雄先生。悩みの尽きない子育てにおいて「子どもの力を信じる」ことの大切さを考え続けてきました。著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』から、すべてのママ・パパに伝えたい子育て論をご紹介します。
小児科医として、また父親として多くの子どもと向き合う高橋孝雄先生。悩みの尽きない子育てにおいて「子どもの力を信じる」ことの大切さを考え続けてきました。著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』から、すべてのママ・パパに伝えたい子育て論をご紹介します。

発達に不安があるなら、なおさら意識してほめましょう。

子育て中のお母さんが抱える子どもの発達にかかわる心配事、困り事は多いものです。乳幼児健診のときに、突然、発達の遅れを指摘されて驚くこともあるかもしれません。反対に「大丈夫でしょうか?」とこちらから相談しても「個人差があるから様子を見ましょう」とあいまいな答えしか得られず、かえって不安がつのることもあるかもしれません。

「うちの子、ちょっとヘンかも」と感じたおかあさんの多くは、インターネットなどで検索しては「もしかして発達の遅れかも」と不安がふくらんだり、「いや、きっと大丈夫」と自分に言い聞かせようとしたり、かわいい盛りの子どもをまえに、重い荷物を背負わされたようでほんとうにつらかっただろうと思います。

知能や運動の発達が遅れている可能性があるお子さんの場合には、幼稚園や保育園への入園をやんわりと断られることもあったかもしれません。そして、小学校へ入学するときも、就学相談などで指摘されたり、通常学級か支援学級か、あるいは通級にするか迷ったり。じつは、小中学校の通常学級でも、発達に問題がある子が約7%いるそうです(2011年文科省調べ)。1クラス40人として2~3人。いや、実際にはもっと多いかもしれません。

さて近ごろ、発達障害をテーマにしたドラマや映画、特集記事をよく見かけるようになりました。具体的な症状についても、なんとなく知っているというかたが増えてきたと実感します。結果として、よけいに育児不安が募る場合もあるかもしれません。

社会生活をおくる上での能力のかたよりが、年齢が上がるとともに明らかになってきた場合に発達障害と診断されることがあります。自閉症スペクトラム(ASD)のお子さんはコミュニケーションをとることが苦手で、興味に強い偏りがあります。しかし、視覚情報の処理など、特定の領域で天才的な才能を発揮することがあります。

注意欠如多動症(ADHD)のお子さんは、落ち着きがなく、忘れ物が多く、我慢が苦手です。しかし、エジソンやレオナルド・ダヴィンチがそうであったように、並外れた〝ひらめき力〞を持っていることがあります。学習障害(LD)のお子さんは、知能は正常で努力家でもあるのに、算数、国語など特定の科目だけが極端に苦手です。しかし、前述したハーバード大学の女性教授(※) のように、仲間に恵まれ、努力を重ねれば、障害を克服できる場合がほとんどです。

発達障害のばあいに、おかあさんが直面する乳幼児期の困りごとを少し書きだしてみましょう。

抱っこしていないと泣きつづける、なかなか寝付かない。ハイハイをしない、指差しをしない、呼びかけてもふりかえらない。そして、言葉をしゃべりはじめるのが遅い、なかなか言葉が増えない。歩くようになると、いっときもじっとしていない、お友だちと遊べない。気に入らないことがあるとこの世の終わりのように泣き叫けぶ。

じゃんけんやゲームで負ければ地団駄を踏んで大騒ぎする。幼児期に健診などで診断されている子どもはさておき、グレーゾーンにいる子どもたちは、親にも叱られてばかりで、すっかり自信をなくしていることもめずらしくありません。

親として、そのような子どもたちとどう関わったらいいのか。試行錯誤しながらの子育てはつらいもの。子どもの個性を理解できずに、結果として虐待につながりやすいことも指摘されています。

発達障害を持つ子どもたちへの配慮にとんだ接し方、ていねいな育て方には、一般的な子どもたちの子育てにも役立つことがたくさんあります。ほんのさわりだけ、ぼくの考えをお伝えしましょう。

もちろん事故や大けがにつながる危険なこと、公共の場などでひとに迷惑をかけることはきちんと叱る。そこでのコツは、その場で、短いセンテンスで的確に、です。

5分後に「さっきのあの態度はなんなの‼」と叱っても、ピンときません。ましてや昨日や先週のことを持ちだしても意味がないのです。自閉症スペクトラムのお子さんであれば、あなたが怒っているということにも興味を示さないかもしれません。

くどくどと言わずに「ホームは走らないで」「ここでは黙るよ」などと、耳元でささやきましょう。

日常的に叱り続けると、彼らは耳をふさぐか聞き流します。「叱る」のではなく、「教える」ことが基本です。いざというときにひとつ叱るためには、9回はほめておいてください。忍耐強くほめ続けることで、お子さんはひとの話に耳を傾けたいと思うようになります。これは共感力を養ううえでも大事なことです。

そんなことしたら、甘やかしていることにならないか。つけあがるだけじゃないか、と思われるかもしれませんが、そこはご心配なく。叱るときは「ほめ9」対「叱り1」の割合を憶えておきましょう。

「簡単に言うけど、うちの子に9個もほめるところなんかないです。そんなのがあったら苦労してないし」と、反発されるおかあさんもいるかもしれません。いいえ、ここがおかあさんの仕事です。どんな子どもも必ずいいところがあります。

絵が苦手でも「色づかいが上手」とか、漢字は憶えられないけれど丁寧で読みやすい字を書くなど。ほんとになんだっていいのです。目が澄んでいてきれい、寝顔がかわいい、あいさつを忘れない、上手に箸が使える、洗濯物をたたむのが几帳面……。

大人だって、ほめられたらうれしいじゃないですか? コミュニケーションが苦手、という個性を持った子どもたちでも、いつもほめられていると、誰かと接するときに「ほめること」が関係を築くきっかけになることを学ぶのです。

おかあさんがほめ上手になると、子どもは自然と自信を持つようになり、そのことが、子どもの個性をより良い方向へと導いていくのです。



※リンク先を参照してください。

小児科医として、また父親として多くの子どもと向き合う高橋孝雄先生。悩みの尽きない子育てにおいて「子どもの力を信じる」ことの大切さを考え続けてきました。著書『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』から、すべてのママ・パパに伝えたい子育て論をご紹介します。

写真提供:ゲッティイメージズ

※当ページクレジット情報のない写真該当

連載の目次